2018年は明治維新から150年となる。政府も「明治150年」と銘打ち「明治以降の歩みを次世代に残す」「明治の精神に学び、さらに飛躍する国へ」という基本的な考えの下に施策を進める。佐賀県でも、県内全域で「肥前さが幕末維新博覧会」を展開し、明治維新を主導した佐賀の「志」の継承を狙う。歴史には正負両面がある。「明治礼賛」に陥らず、「多角的に教訓を拾い出して今後に生かす」という視点を忘れずに足元の歴史を見つめ直したい。

 立憲政治、議会政治の導入、技術革新と産業化の推進、機会の平等、和魂洋才。政府は、こうしたものをキーワードに明治以降の近代化の歩みを評価し、明治期の文書や資料の収集・デジタルアーカイブ化、明治期に活躍した若者や女性、外国人の掘り起こしなどを進める。「明治の精神に学び、日本の強みを再認識することは大変重要」。政府は「明治150年」事業の意義をこう強調する。

 「近代化の一里塚」となった明治維新の意義は十分理解するところだが、光と影があることを忘れてはならない。例えば神仏分離令を契機に「廃仏毀釈」が全国に広がり、貴重な仏像や寺院が破壊された。また苛烈なキリシタン弾圧もあり、岩倉使節団が訪問先の欧米諸国から批判を浴びて、1873年に切支丹禁止の高札を撤去するという経緯もある。

 近代化政策の陰で人権に対する考えはどう変わったのか、失われたものは何かということにも目を向ける必要がある。そこから現代に重ね合わせて、課題をくみ出す視点が得られれば、150年前を振り返る意義はさらに増すといえる。

 佐賀県は、薩長土肥の一角として、佐賀藩が明治維新を主導した歴史を踏まえ、2018年3月から約10カ月間、「肥前さが幕末維新博覧会」を県内全域で展開する。誇るべき歴史や文化を再認識することで地域への愛着を生み出し、明治維新を成し遂げた先人の「志」を学んで県政浮揚につなげる。県が重点施策として150年事業に力を注ぐ理由はここにある。

 幕末維新記念館(佐賀市・市村記念体育館)、佐賀藩の藩校・弘道館が果たした機能や役割を紹介するリアル弘道館(佐賀市・旧古賀家)、佐賀藩の武士道書「葉隠」の世界を体感できる「葉隠みらい館」(佐賀市・旧三省銀行)を主な展示とするほか、県内各地の既存施設でも連動した企画展などを計画する。

 県は一過性のイベントに終わらせないため、来場者に自分自身に引き寄せて学び、気づきが得られるような体験型の仕掛けを検討しているという。それぞれの生き方や地域づくりなど今後のヒントや教訓を得る場と位置づけ、展示やイベントに工夫を重ねてほしい。

 県が官民挙げて取り組むだけに、幕末維新期への関心が高まることは容易に想像できる。その機運を追い風に、足元の歴史掘り起こしの促進にもつなげたい。

 現存する史料は権力側のものが多く、民衆の動きが見えづらいのがこの時代の研究現場の現実だ。地域に民衆に関する史料が眠っている可能性は十分にある。そうした史料発見から新たな幕末維新期の視点が得られることもある。その意味でも、足元の歴史を見つめ直す好機にしたい。(梶原幸司)

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