ボクシングの村田諒太選手が、タクシーに乗ろうとして割り込まれたエピソードを経済誌で語っていた。一部始終を見ていたおばさんが「ひどいわね」と笑顔を向けているのに気づき、「僕の怒りはさーっと収まり、『ひどいですよね』と笑いながら話しかけていました」◆いったい何が起きたのか。「おばさんが現れたことで第三者の視点に切り替わった。だからムカつく出来事が一瞬にして面白い出来事に変わったんだと」。哲学や心理学の本を愛読し“闘う哲学者”と呼ばれる村田選手らしい◆5月のWBA世界ミドル級の王座決定戦は不可解だった。チャンピオンからダウンを奪って、誰もが村田選手のタイトルを確信したが、まさかの判定負け。ブーイングが飛んだが、本人は「第三者が判断すること。僕自身が勝敗について言うのは違う」と冷静だった◆この経緯と半年後の圧倒的勝利は、怒りとのつきあい方を提案する日本アンガーマネジメント協会が選ぶ「上手に怒りに対応した人」ランキングで2位に。「次の試合に勝つという結果を出すことで自分の怒りを昇華している点はアスリートとして、また人としても非常に成熟している」◆村田選手のように切り替えられたなら、と反省しきりの人もいよう。怒りにまかせて醜態をさらした顔が、あれこれと思い浮かぶ年の瀬である。(史)

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