働く世代のがん患者が増えている。2人に1人はがんになる時代だというのに、治療と仕事の両立を後押しする支援が十分に広がっていない。

 患者が働きながら通院や負担軽減に利用できる「短時間勤務制度」や「在宅勤務制度」を整備している主要企業は、それぞれ3割にとどまっていることが、共同通信のアンケート調査で分かった。中小零細企業の多い佐賀県内の現状はもっと不備が多いとみられる。

 雇用継続に配慮する努力義務を企業に課した改正がん対策基本法が成立して今月で1年。法の趣旨を踏まえ、企業側には柔軟な働き方ができる体制整備が求められる。

 国の推計では、仕事を持ちながら、がんで通院している人は全国で約32万人。同じくアンケート調査で、がんを理由に1カ月以上連続して休業している従業員がいる企業の割合は約2割と分かった。

 一方、患者の離職は3割に上るとの調査もある。

 内閣府の「がん対策に関する世論調査」(今年1月)によれば、がんの治療や検査のために2週間に1回程度、病院に通う必要がある場合、「働き続けられる環境にない」と思う人は64・5%。「環境にある」は3割にも満たなかった。

 理由として「代わりに仕事をする人がいない、いても頼みにくい」「職場が休むことを許してくれるかどうか分からない」と考える人が多かった。両立が難しい現実を突きつけられる。特に立場の弱い非正規労働者には雇い止めの不安もつきまとう。がんになっても、生活があり、がんだからこそ、治療費もかかる。働き続けられる環境は失えない。

 佐賀県も、県健康づくり財団に委託して相談支援を実施。佐賀大医学部附属病院、県医療センター好生館、唐津赤十字病院、嬉野医療センターの四つの「がん診療連携拠点病院」内でも相談を受け付けている。このうち、佐賀大病院と好生館には週1回、ハローワークの就職支援ナビゲーターが来院して対応している。

 治療と仕事の両立を支援するための制度を導入する事業主には、国が10万円の助成金を支給する制度もできた。時間単位の年次有給休暇や、フレックスタイム制度、短時間勤務制度、在宅勤務(テレワーク)などの措置が対象だ。

 ただ、佐賀県内企業の年次有給休暇の取得率は平均で47・1%にとどまる。1回取ればカウントされる数字だが、柔軟な働き方以前の問題が横たわる。

 患者が休みやすいカバー態勢や、配置など職場内での調整には周囲の協力も欠かせない。まず、病気を公表できる雰囲気をつくり、両立支援の土壌を調えることからである。企業の腰は重くても、トップの理解で進む場合もあり、粘り強い啓発が求められる。

 「5年生存率」は、全がんで男女合わせると62・1%(全国)。種類やステージによっては90%以上になり、がんはいまや死に直結する病気ではない。

 治療後の人生のためにも、そして治療中の活力維持にも仕事の重みは増す。「がんになったから」というだけで仕事から遠ざけることは、企業や社会にとっても大きな損失になることを強調しておきたい。      (横尾章)

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