前商工観光課長が企画した「清水竹灯り」。今年も11月に開き、多くの観光客が訪れた=小城市の清水の滝

 小城市前商工観光課長の男性(55)=退職=が市観光協会の役員変更登記を巡り文書偽造をしたり、架空請求による公金不正流用で観光イベントの赤字を補てんしたりしていた不祥事。市の発展に努めてきた前課長は、なぜ行政のルールを踏み外したのか。事務局長を務めていた観光協会で、多額のふるさと納税の事務委託費を元手に、産業振興を図る新組織設立の構想を進めるため、放置していた事務手続きを急ぐ姿が見えてきた。

 「元々、彼は今年に入り辞職を模索していたようだ」。前課長の知人は声を潜める。「観光協会から新組織を発足させ、『(前課長は)そこの責任者になる』と意気込んでいた」。その頃、2016年度の「清水竹灯(あか)り」事業で多額の赤字が発覚。外部のチェックを免れるため、50万円以下の課長決裁を悪用し公金で穴埋めする手続きを進めた。

目細める市長

 前課長は、江里口秀次市長が小城町長時代に商工観光課に配属。十数年前、清水地区の鯉料理組合の要請により観光集客事業「清水竹灯り」を企画した。

 事業は大当たりする。15年度の来場者は過去最高の2万3千人、環境保全のため募る協力金(500円)は1100万円に上った。企業誘致を含め前課長の手腕に市長は目を細め、市幹部が他部署への異動を薦めても、耳を貸さなくなったという。同一部署に15年間在籍したことも問題の温床となっていく。

 前課長はふるさと納税にも着目。副課長時代、返礼品を専門に扱い納税を電子決済で手続きするサイトの存在を知ると、市長の信頼を盾に、難色を示す管理職を押し切って導入した。15年4月、課長へ昇格し、市観光協会の事務局長も兼ねた。

膨れる資金

 ふるさと納税の寄付額は14年度5億1196万円から16年度は15億7979万円と急増した。協会への返礼品業務委託費も14年度2億4444万円から16年度は7億7904万円と伸長。繰越金は14年度の5560万円から16年度は1億6511万円に膨れた。

 前課長は組織改編にも動く。6人の理事数を役員改選で12人に倍増。賛同者を増やすことで立場を強固にした。15年度総会で、代表理事が江里口市長から小城商工会議所の村岡安廣会頭へ交代する。動機は不明だが、登記変更には手をつけていなかった。

棚上げ宣言

 前課長は、返礼品を扱う業者の支援をバックに、「市物販振興協会」の設立を昨夏、観光協会に提案する。業務委託費の新たな受け手となり、益金で市内業者の販促を後押しする構想だった。事務所は牛津駅近くの空き店舗に設置する計画も進めていた。

 公金による穴埋めで不払い精算を今夏に終えた前課長は「起業家になる」と再び早期退職の意向を周囲に漏らす。「この時、新組織設立には観光協会の登記変更が必要と気づいたのでは」と知人は推測する。商工観光課内外に文書偽造の協力を求めた時期と重なる。

 不祥事発覚後の11月上旬。観光協会の会合で理事の一人が、新組織設立の計画を尋ねると、代表理事の村岡氏は厳しく切り返した。「騒動になっている今、(新組織の)設立を論議する時ではない」。事実上の棚上げ宣言だった。

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