ピアノを演奏するYUSKさん(提供写真)

「症状への理解が広がれば、当事者はもっと自由に生きることができる」と話すピアニストのYUSKさん=佐賀市

 本人の意思とは無関係に体が動き、大きな声が出てしまう障害「トゥレット症候群」を知ってほしい-。佐賀市出身のピアニスト、YUSK(ゆうすけ)さん(35)=ドイツ在住=が、これまでの経験や思いを語り始めた。自閉症やアスペルガー症候群など発達障害が少しずつ知られるようになってきたが、神経系の発達にかかわるトゥレット症候群の認知度は低い。「理解が広がれば、当事者は自由に表現できるプラットホーム(足場)を得る。目を向けてほしい」と願う。

 秋に佐賀市で開かれたピアノの演奏会。YUSKさんは透明感あふれる音色を奏で、聴衆を魅了した。

 父親の仕事の関係で、日本で過ごした数年間を除き、米国やスイスなど海外での暮らしが長い。11歳の時、米ニューヨークに転校したその日、症状が強く出た。「ン、ン」という声が続き、手で体や鼻をたたいた。「癖を濃縮した感じ。0コンマ何秒という瞬間的な感じで、出したいものが内に存在する。抑えられない」。症状は毎日続いた。

 頻度を抑える薬を処方されたが、副作用が強く服用できなくなった。地下鉄に乗ると、隣り合った人が不快な表情を浮かべて席を替わったり、「変な声を出してんじゃないよ」と吐き捨てるように言われたり。屈辱的で、同級生と繁華街に出かけることさえためらった。思春期の真っただ中で、親への反抗心も強く、不登校になった。

 13歳から、英国の中高一貫校で過ごした時期も症状は繰り返された。それでも、学校も、寮で一緒に過ごした友人にも恵まれた。地下鉄で侮辱されても、「病気なんだから、仕方ないだろ!」。代わりに言い返してくれる友人がいた。だから、自分らしく、明るく過ごせた。「障害がある自分にも、見えだって、恥だってある。社会の理解があることが、本人の生きづらさを和らげてくれる」

 症状がひどく表れていたころも、気を抜くと強く出てしまう今も、ピアノの演奏中やサッカー、温かい風呂に入っている時は、症状が出ない。幼少期に始めたピアノを弾く時間は全く出ないという。はっきりとした理由は分からないが、没頭できる時間が関連しているような気がしている。今はドイツの大学で非常勤講師を勤め、英国やドイツ、日本で演奏活動を重ねている。

 日本での演奏会後、同じトゥレット症候群に悩む患者から「勇気づけられた」と言葉をかけられた。

 日本で偏見に苦しむ当事者が多いと知るようになって、自身のことを語り始めた。「障害があることは、その人の可能性がないこととイコールではない」。そのことを社会の側に伝えていく。

 

 ■トゥレット症候群

 難病情報センターなどによると、せき払いや単語を連発する音声チックと、まばたきや首振り、肩上げなど複数の運動チックを伴い、1年以上持続する精神神経疾患。多くは小児期に発症するが、治療法は確立されていない。

 

 

=ひたむきに、前向きに生きている人たちがいます。そんな佐賀県内の人たちや県出身者にエールを送る企画です。(随時掲載)=

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