■若い世代支援、理念と隔たり

■働きやすさ効果に疑問も

 2017年度税制改正の柱となる所得税の配偶者控除見直しは、配偶者の給与年収の上限を150万円に引き上げる小幅な修正で決着した。「103万円の壁」が遠のいてパートの主婦が働きやすくなると歓迎する声がある半面、専門家は本格的に就労を促す効果を疑問視する。若い世代を支援するという理念との隔たりも指摘されている。

 見直しは、現行で103万円超を稼ぐ配偶者に適用される「配偶者特別控除」を拡充する形を取る。税収が減らないよう夫の稼ぎを基準に所得制限を導入するため、夫婦の年収の組み合わせによって控除額が変わる複雑な仕組みとなる。

 夫が世帯主の場合、配偶者である妻の年収が150万円まで配偶者控除と同じ38万円の控除を夫に認め、年収150万円超~201万円は控除額が9段階で減っていく。これとは別に、夫の年収が1120万円を超えた場合も控除額が3段階で縮小し、1220万円を超えるとゼロになる。

 現在は100万円程度で就労を抑える主婦が多いとされる。パート雇用に頼る食品スーパー大手、ライフコーポレーションの広報担当者は「この数年は人手が逼迫(ひっぱく)している。パートが多く働けるのはプラスだ」と話す。

 ただ働く女性には、就労を阻む制度上の壁が幾重にも立ちはだかる。配偶者手当のある企業の約6割が「103万円」を基準に手当を支給。会社の規模に応じて妻の年収が106万円、あるいは130万円以上になると社会保険料の負担も生じる。さらに税制改正により150万円超で控除が縮小することになれば、新たな壁として意識されることになりかねない。

 安倍晋三首相が強調した「若い世代に光を当てる税制」との矛盾もある。見直し後の控除を受けられるのは配偶者の年収が201万円までの世帯に限られ、夫婦がそれぞれ200万円台を稼ぐような子育て世帯には減税枠が及ばないからだ。

 財務省によると、現在控除を受けていない世帯主が適用拡大で満額38万円の控除を受けるようになれば、年収500万円だと住民税を含む減税額が年5万2千円、年収1千万円では年10万9千円となる。年金収入で暮らす高齢者はサラリーマンと所得税額の計算方法が異なる。大和総研の試算では、配偶者の年金が160万~242万円の世帯が減税となり、相対的に高所得層が有利となっている。

 大和総研の是枝俊悟研究員は「就労を促す効果や若い低収入世帯への恩恵は乏しい。配偶者控除の拡充を現役世代に限って年収要件をより上積みして、幅広い夫婦を総合的に支援する工夫もできたはずだ」と指摘する。

 与党の税制調査会は諸控除を低所得層に手厚くする改革を数年かけて実施する考え。だが、多くの世帯に影響が及ぶ「夫婦控除」の創設をあっさり見送っただけに、実現性は見通せない。【共同】

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