澤野善文編集局長のインタビューに答える江北町の山田恭輔町長=江北町役場

●「必要な“脇役”」目指す

 県内では数少ない、人口を維持している自治体、江北町。県中央部に位置し、JR佐世保線と長崎線の分岐である肥前山口駅を擁するなど、交通の要衝としての歴史が深く、最近では子育て支援策でも注目を集める。山田恭輔町長(49)に今後の展望を聞いた。

 ■人口が維持できている理由をどう捉えているか。またそれを持続させるための方策は。

 「佐賀のへその町」と言われる地理的な要因がある。それに加えてJR肥前山口駅や道路、上下水道など先輩たちが実施してきた基盤整備。さらに近年は子育て支援もある。この3条件が要因だと思う。

 ただ、従来の江北町の優位性が相対的に低下していると危惧している。九州新幹線鹿児島ルートの開業時、佐賀方面に来る特急の数は増えたが、肥前山口に止まる本数は増えなかった。また有明海沿岸道路や佐賀唐津道路など、「へそ」の周りの道路網とのアクセスがまだ確立されていない。

 佐賀のへそであることを意識してそうしたものを再構築し、佐賀全体へのアクセスを確保していくのが大事だ。

 ■子育て支援の分野では他自治体と差異化できる取り組みの用意があるか。

 本年度から給食費を無料にしたが、さらに独自策を打ち出していきたい。

 子育て世帯の要望はさまざまだ。その受け皿として昨年9月、「子育てママタウンカフェ」を開き、いろいろな気づきを得た。待機児童や放課後児童クラブへの対応が要望に上がるかと思えば、一番多かったのは「公園をつくってほしい」だった。町の中心で安全に気軽に遊ばせることができる公園だ。本年度中に基本計画をつくりたい。

 カフェは、自分とは違うニーズがあることを知ってもらう機会でもある。昨年度は鳥インフルエンザでできなかったが、本年度は年明けに開きたい。

 また国内と海外の自治体との交流事業を考えている。東京都足立区に同じ「江北小」があり、江北小同士の交流を打診している。中学生はオーストラリアとなら、時差も少ないのでどちらも授業時間内にインターネットで交流ができる。

 こうした取り組みで、子どもたちに「将来は江北町に帰りたい」という意識を涵養(かんよう)する。

 ■2015年の町長選では、高校生までの医療費無料化も公約に掲げていた。

 任期中にチャレンジしたいが、「やりたいこと」よりも「やらなければならないこと」がたくさんあることが就任して分かった。待機児童や放課後児童クラブの高学年受け入れなど、課題解決に忙しいというのが実感だ。

 ■九州新幹線長崎ルートの開業や有明海沿岸道路の延伸など、交通環境は今後さらに変化する。連絡道路の話は出たが、それ以外の対応策があるか。

 交通は広域にわたるので町でできることも少ないが、コミットはしなければならない。トップセールスや提案、要望は必要だ。再び特急が全便止まる町にしたい思いはある。

 ■移住定住対策はどう考えるか。

 江北町はここ数年、空き家への移住に力を入れてやってきたが、一般の転入対策もやっていく。そのために目指すのは「日常生活都市」。安心安全や子育て、基盤整備など、きちんと暮らせる町の環境を整えていきたい。

 ■民間の自発的な地域づくりとの連携についてはどのような方針か。

 持続性、多様性、自主性がいまからのまちづくりには大事だ。自主性を持ち頑張る事業者は応援したい。

 ふるさと納税については異論もあるが、有効な地方創生の手段だと思う。町内の商工事業者はこれまで、町内の人向けの商売だけで済んできた人が多いかもしれないが、この仕組みをうまく使うことで、事業者も外に目を向け、何が売れるか考え始めてくれた。町内の酒造会社が久しぶりに酒を造ってくれたし、今村温州みかんの生産者もジュースを作るようになった。町に貢献している意識も生まれ、町と民間が互いに触発し合う構図ができ始めた。

 ■行財政のあり方や再点検についてはいまどう考える。

 100人しかいない役場職員で何ができるかをすごく考える。たとえば企業誘致は自治体の標準装備のように言われるが、大きな自治体のように何十億円もかけて工業団地を造り、大物の企業を待つような余裕は、この規模の町では難しい。活用可能な土地を集約し、近隣自治体にある大企業の関連工場の受け皿をつくるのが、あるべき姿だ。

 漫画に例えれば、「脇役だが、いないと成り立たない」くらいのキャラクター。江北町に住み、町外へ安心して働きに行ってもらうことが、我々の地の利やこれまでの整備にも合致する。

 ■駅北側の再開発も公約に掲げていた。

 駅北の道路はいま県道だが、県で歩道整備事業を準備してもらっているので、それに合わせて駅北口周辺の開発を実施したい。まだあまり着手できていないことの一つだ。

 ■町自体の団結についてはどう感じているか。

 それがこれからのテーマ。町内の子どもたちの活躍を知ってもらうため、町民運動会でパレードをし、ビッキーふれあいまつりにも4千人弱が来場した。海外と国内の交流事業を言ったが、さまざまな形での域内交流も必要だ。高齢化率が10%未満の地区もあれば、40%超もある。新住民と旧住民の交流も非常に大事だ。公園もそうした交流と憩いの場にしたい。

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