■寸言

 9515人から68人増の9583人。5年に一度の国勢調査の江北町の人口を2010年と2015年で比べた数字だ。大して変わりはないが、変化なく維持していることが大きな意味を持つ。15年の調査で人口が増えた県内自治体は江北町と鳥栖市など4市町だけ。江北町の場合、1995年の人口も9539人で、ここ20年余り人口が減っていないことになる。多くの自治体が人口減に悩む中、特異な地域ともいえる。

 人口維持の源は、佐賀県の中央部に位置する“地の利”。ここ10年は国道34号南側に広がる準都市計画区域での住宅開発が盛んで、戸建て住宅やアパートの建設が続く。

 不動産関係者は「県職員など県内各地に異動がある職種をはじめ、共働き夫婦の職場通いや実家へ距離を考えて選ぶケースも多い。造成から販売まで1年かからない」と活況を解説。「周辺市町からアパートに移住し、住み心地に満足して建てる人が多いという特徴もある」という。「住みたい江北」といえそうだ。

 地の利は人だけでなく店も呼んだ。国道34号バイパス沿いには、1993年にジャスコ江北店(現イオン江北店)を皮切りに電気店や書店、飲食店と通りを埋めていった。「商圏は5キロ圏内。若い層が増え、商品構成もファミリー層や子どもにシフトしている。スーパーもディスカウント系に切り替えた」(イオン江北店)と、購買や飲食面でも住環境が整っていった。

 ただ、この活況も曲がり角に差し掛かっている。準都市計画区域の開発は終盤で活用できる土地も残り少なくなっている。町は新たな都市計画策定も検討しており、これからの町を位置付ける転機を迎えている。

 もうひとつの転機も控える。2022年度の九州新幹線長崎ルートの暫定開業だ。新幹線開通によって西九州鉄道網の長崎への分岐点は、江北町にあるJR肥前山口駅から武雄市の武雄温泉駅に変わる。「新幹線を町づくりにどう生かすか」が課題になる。

 開通に伴って博多-肥前鹿島間の特急は激減する。長崎線沿線地域の鉄路の利便性が悪化することで江北町の居住地としての吸引力がさらに高まる可能性もある。有明海沿岸道路の整備が進めば、江北町は県西部方面への玄関口になる。町として「住む魅力」に磨きをかけることも一考だろう。

 給食費無料化など既に取り組んでいる子育て支援の充実、高齢化社会を見据えた取り組み、商業施設や医療モール、娯楽施設といった暮らし関連施設の誘致-など視点はいろいろある。

 二つの転機は、これからの江北町を展望する契機になる。「地の利」と相乗効果で町の魅力をアップする“プラスα”を見つけたい。

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