大事故の危険があるとして広島市の住民らが、四国電力伊方原発3号機(愛媛県伊方町)の運転差し止めを求めて申し立てた仮処分の即時抗告審で、広島高裁が運転差し止めの決定を下した。

 東京電力福島第1原発事故後、原発の再稼働や運転を禁じる高裁段階の司法判断は初めてだ。

 事故から間もなく7年、国や電力会社がここへきて加速させている原発の再稼働路線に対し、司法が周辺住民の意見をくみ上げ、厳しい判断を突きつけたことを政策決定者らは深刻に受け止める必要がある。

 決定は、九州・阿蘇山の大噴火が伊方原発に与える影響について原子力規制委員会や四国電力が行った評価の不十分さを指摘しており、九州電力をはじめとする他地域の原発の安全性評価にも反省を迫る内容となった。

 東電の事故後、規制委は、活動する可能性が否定できない火山が原発から半径160キロ以内にある場合、火砕流や火山灰などの影響を評価し、必要に応じて対策を求める「火山影響評価ガイド」を定めた。

 規制委は、ガイドに基づいて、伊方原発から約130キロの場所にある九州の阿蘇カルデラが大規模な噴火をした際でも、火砕流が原発に到達する可能性は十分に小さいと評価。2015年7月、3号機が「原発の新規制基準を満たしている」と結論付け、再稼働に道を開いた。

 これに対し、3号機が再稼働した昨年8月以降、周辺の4地裁・地裁支部で住民らが運転停止の仮処分を申請。差し止めを認めなかった今年3月の広島地裁決定に対し、住民側が高裁に即時抗告していた。

 高裁は決定の中で、火山噴出物の量や火山降下物の厚さなどに関する四国電力の想定が「過小である」と認定。「伊方原発が新規制基準に適合するとした原子力規制委員会の判断は不合理」だと断じた。

 「まるで福島原発事故などなかったかのように、原発を再稼働させる動きが加速している」とする住民の危機感を司法が受け止め「生命、身体に対する具体的危険の存在」を認めた形だ。

 国のエネルギー政策について、今回の決定が持つ含意は大きい。

 経済産業省は現在、14年に定めた国のエネルギー基本計画の見直し作業を進めている。

 現在の原発を取り巻く状況を見れば「30年度に電力供給の20~22%を原子力で賄う」との目標達成が困難だと指摘する識者は多いが、経産省はこの目標を見直さない方針を早々に表明。それどころか次期計画の中で、原発の新設や立て替えの重要性に言及することを検討、原発の経済性をアピールし再生可能エネルギーの問題点を指摘する情報をホームページに掲載するなど、原発への傾斜を強めている。

 来年に予定していた再稼働が困難になり、経営状況が悪化するとの懸念から四国電力の株価は暴落した。今回の決定は、規制委のお墨付きを得た原発でさえ、大きな「司法のリスク」を抱えていることも示した。

 経産省などの政策決定者も電力会社の経営者も、今回の決定を、既得権益を重視する旧態依然としたエネルギー政策とその決定手法を見直し、市民の意見や世論を反映させたエネルギー政策を日本で実現するための契機とすべきだ。(共同通信・井田徹治)

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