祖父の思い出に「水餃子(ぎょうざ)」がある。祝い事には旧満州(中国東北部)で習った手作りを振る舞ってくれた◆浜玉中3年の吉原直(よしはらなお)さん(15)は祖父とつながる自分を、「私のルーツ」と題し作文に書いた。満州で生まれた父方の祖父と、その家族の苦難の体験を綴(つづ)る。戦後、祖父たちは、死と薄皮一枚隔てた中を日本へ引き揚げた。その時、助けてくれたのは中国人や朝鮮の一家だった◆「国同士が争っていても、そこに住む人々のことを偏見や差別の目で見てはいけないという教訓」と説く。今年の全国中学生人権作文コンテスト佐賀県大会で最優秀賞に輝き、中央大会でも特別賞に(受賞作は今月4日付佐賀新聞で紹介)◆吉原さんは2年前にも同じ大会で、母方の祖父の生き方を書き最優秀賞を受けた。学校で人権について学ぶことの影響が大きいという。人権教育は浜玉中の伝統である。毎年、学年別に水俣病の資料館や、かつての特攻隊基地、ハンセン病療養所などを訪ねる。行って終わりとせず、積み上げ、深めていく◆次第に子どもたちは表情が柔らかくなり、親密さが増すそうだ。さまざまな人生に触れることで、自分と違う考え方、生き方を受け入れられる寛容な心が育つのだろう。それは自らを見つめる機会ともなり、自(おの)ずと地に足がついていく。思春期の体験は人生の宝だ。(章)

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