勤務先の嬉野市塩田町の養護老人ホーム「済昭園」で2014年12月、入所していた当時95歳の男性の胃ろう用カテーテル(管)をわざと引き抜いて粘膜を傷つけたとして、傷害罪に問われた介護職員藤武奈緒美被告(32)=鹿島市=の判決で、佐賀地裁は11日、「故意に引き抜いたとするには合理的な疑いが残る」として無罪(求刑懲役1年)を言い渡した。

 検察は、ホーム側が設置していたビデオ映像などから、被告が男性の腹部付近で左手を引いた際に「ぽん」と何かが抜ける音がしたのを根拠に「カテーテルを引き抜く暴行を加えたとしか考えられない」と強調。弁護側は自然に抜けた可能性などを主張していた。

 吉井広幸裁判官は判決理由で「体全体で引かないと、手首や肘だけの力では抜けない」とする医師の証言を引用し、相当な力が必要とした上で「殊更に力を込めている様子はうかがわれない」「カテーテルが抜けた際の音と断定するには無理がある」と述べた。

 また、14年11月4日から犯行があったとされる12月25日までの間、男性のカテーテルが抜けた事例は確認できただけで14回あり、男性自身が抜いたと疑われるケースや、被告がいなかった時に起きたものも含まれていると指摘した。

 藤武被告は15年5月の逮捕時から一貫して否認していた。無罪判決を受け、弁護人は「無罪判決が出るまで2年半かかった。早く裁判から解放してほしい」と控訴断念を求めた。

 佐賀地検の大山輝幸次席検事は「判決文を詳細に検討し、上級庁とも協議の上、適切に対応したい」とのコメントを出した。

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