東京一極集中を是正するため、政府の有識者会議が東京23区にある大学の定員を抑制するとした最終報告書をまとめた。「従来にない抜本的な対策」(梶山弘志地方創生担当相)を受け政府は、来年の通常国会で法制化する方針だ。

 報告書に盛り込まれた東京の大学の定員抑制や地方移転、それに地方大学の振興、地方での若者の雇用創出というのは魅力的な政策に映る。だが、実際に効果を上げるには時間がかかることも明らかだ。

 地方側から見れば、東京23区での大学の定員抑制は必然性がある。例えば、東京圏(東京都、埼玉県、千葉県、神奈川県)への近年の転入者数は転出者よりも多くその差は12万人規模ある。このうち大学進学時に限定しても、7万人程度の転入超過となっている。

 東京都の大学進学者の収容力は200%程度、つまり都内の高校を卒業した大学進学者の倍の学生を受け入れる定員を持っている。その上、大学の卒業生は東京の企業に就職するため、地元に戻る人が少ないという構造的な問題がある。まさに東京はブラックホールのように全国から若者を吸い寄せているのだ。

 事態を深刻化させるのは、18歳人口の推移だ。この25年で4割減って2017年には120万人となった。40年には88万人となる。進学率のアップは見込めず、減っていく学生を全国で奪い合うことになる。

 つまり、23区内の大学の定員を据え置いたとしても、学生は人気のある東京に集まり、そのあおりを受けて、地方の学生数は確実に減少する。地方の大学の経営が成り立たず、淘汰(とうた)につながることは明らかだ。

 小池百合子東京都知事は「大学の国際競争力を低下させ、国益を損なう」などと定員抑制に反対しているが、この現状を見れば何をすべきか明らかなはずだ。今から全国的な大学の適正な配置について、議論を始めることを提案したい。

 地方大学の振興では、「総花主義」から脱却し、強みのある分野の強化に取り組むよう求めた。具体的には、地域ごとに産官学が連携する推進体制(コンソーシアム)を構築、知事がリーダーシップを発揮して振興計画を策定する。このうち国が地方創生の優れた事業として認定すれば交付金で支援するとしている。

 これは、国の意に沿わない計画には交付金を与えないという趣旨でもある。地方の創意工夫、自主性を生かすなら、交付金を配るルールを明確にし、国からの口出しは最小限に抑えるべきだ。

 報告書に盛り込まれたこれらの措置が法制化されても、進学を契機とした地方からの流入が、どれだけ減らせるかといった定量的な効果の試算はなされていない。長期的には何らかの効果は確かに出るだろうが、短期的には期待できない。

 政府は東京五輪が開かれる20年には「東京圏の転入者と転出者の数を均衡させる」目標を掲げている。これを忘れてはいけない。この報告書の施策だけでは、大企業の本社機能の移転など安倍政権の進める他の地方創生策と同様、期待先行で終わる恐れがある。

 残された時間は少ない。国の機関の地方移転といった、早期に成果が上がって均衡目標の達成に寄与するような、即効性のある政策も強力に推進すべきだ。(共同通信・諏訪雄三)

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