約7年余りにわたる「診察室から」への寄稿も私の担当は今回が最後になります。多くの方から拝読いただきご意見や励ましのお言葉をいただきました。本当にありがとうございました。最終回ですので、自分が目指す今後の医療について記載し、これまで支えていただいた患者さんや家族の方々、本紙の担当の方々へのお礼とご報告とさせていただきます。

 佐賀医科大学が開校して来年40周年を迎えます。私たち1期生をはじめ創設期のメンバーは、故古川初代学長の、「地域医療へ貢献」「赤ひげ的医師像の実践」など、単なる医療従事者としての知識や技術の習得のみならず、基本的な医療者としての姿勢を教育されてきました。「病気だけを見るな」「患者さんを人として診なさい」など、患者さんが発する症状を単純に受け取るのでなく、症状の内容、背景、患者さんを取り巻く環境などを深く理解して診療に臨みましょうというメッセージだと理解して、診療に従事してきました。

 一方で現在の医療の高度化に伴う分業により、医療スタッフの患者さんへの関わり方も断片的な場面が増えてきました。駆け出し医師であった当時を思い出すと、あの忙しさを再現することは不可能だと思いながら、一方で外来から退院まで主治医として患者さんや家族の方々と向き合った時が懐かしくも思えます。現在、自分は情報通信技術(ICT)や人工知能を活用した医療体制の整備にも力を入れています。人間臭い「赤ひげ的医師像」とICTは相いれないような受け止め方をされますが、少しでも医療現場の作業の効率化を図り、昔のように医療スタッフが患者さんや家族の方々と向き合う時間を作り出すのが大きな目的です。医療ICTによる医療の効率化は国家的プロジェクトではありますが、患者さんのための医療、地域のための医療という目標を見失わないで進んでほしいと思っています。(佐賀大医学部附属病院 検査部長・末岡榮三朗)

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