NHKの受信料制度は契約の自由を保障した憲法に反するかどうかが争われた訴訟の上告審判決で、最高裁大法廷は「合憲」とする初の判断を示した。テレビがあるのに受信契約を拒む男性にNHKが支払いを求めて提訴。「受信設備を設置した者はNHKと受信契約を結ばなければならない」と定める放送法の解釈が主な争点になった。

 契約の強制は契約の自由への重大な侵害と男性側は主張したが、最高裁は公共放送としてのNHKの役割を重視。その財政的基盤を広く負担してもらう仕組みについて「憲法が保障する表現の自由の下で国民の知る権利を実質的に充足すべく採用され、合理的なものと解される」と述べた。

 支払いを事実上の法的義務と位置付けて、NHKに“お墨付き”を与えた形だ。徴収業務や契約・支払いを求める裁判に及ぼす影響は大きい。ただインターネットの普及により若者のテレビ離れが進むなどメディアを取り巻く環境が激変する中、ネットのみの視聴者からも受信料を徴収しようという動きには厳しい視線が向けられている。

 民放からは「NHKの肥大化」を危ぶむ声も出ている。公共放送の役割を規定した放送法が施行されたのは1950年のことだ。最高裁判決を契機に時代の変化を踏まえ、受信料も含め公共放送のあるべき姿を探る議論を深める必要がある。

 NHKによると、2016年3月末の時点で受信契約の対象は全国で4621万世帯。このうち3709万世帯は契約を結んでおり、3612万世帯が受信料を支払っている。支払率は78・2%で、過去最高だった。16年度決算では事業収入7073億円のうち受信料収入は6769億円と95・7%を占めている。

 未契約世帯は900万を超える。受信料収入に頼るNHKは戸別訪問で説得を重ね、どうしても応じてもらえない場合には裁判を起こすことになるが、今回の判決は追い風となろう。とはいえ、これまでにも「弱い個人を狙い撃ちにしている」といった声があったことを忘れてはなるまい。

 判決も「NHKが理解を得られるよう努め、契約が締結されることが望ましい」としている。

 そんな中、気になるのは有識者から成るNHK会長の諮問機関が今年9月、支払率を上げるためNHKが契約を確認できない家屋の居住情報を電力会社やガス会社に照会できる制度の検討などを答申したことだ。放送法改正が必要だが、本人の同意がなくても個人情報を扱えるようになる。

 NHKが支払率の向上に知恵を絞るのは当然としても、そのような制度に理解を得られるか慎重に見極めた方がいい。

 この諮問機関はNHKが19年度開始を目指す番組のネット常時同時配信を巡り、テレビを持たずネットのみを利用する世帯への受信料課金に「一定の合理性がある」などとする答申もまとめている。民放が反発し、NHKは配信開始時、ネット世帯に新たな費用負担を求めない方針を表明したが、ゆくゆくは実現させたい考えとみられる。

 ネットにも公共放送は必要か、民放の経営を圧迫しないかといった視点からも検討を加えることが求められよう。ワンセグ機能のある携帯電話を持つ人から受信料を徴収できるかでも争いは続いており、公共放送の在り方を巡る論点は尽きない。(共同通信・堤秀司)

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