ICTの活用を考えたシンポジウム。県内企業や学校関係者からの事例報告もあった=佐賀市のガーデンテラス佐賀(マリトピア)

木村隆夫氏

友廣一雄氏

寺本憲功氏

 情報通信技術(ICT)で社会はどう変わるか-。佐賀県内の関連企業や大学関係者が11月30日、佐賀市で開かれたシンポジウムで意見を交わした。ICTを開発、活用する目的や意義を語り、経済や医療、人材育成など幅広い分野で革新的な役割が期待される先進技術の可能性を探った。

 コンサルティング大手アクセンチュアの程近智相談役が講演。米IBMの人工知能(AI)で社内問い合わせシステムを開発した木村情報技術(佐賀市)の木村隆夫社長、ソフトウエア開発オプティム(本店・佐賀市)の友廣一雄取締役、知的財産の創出などを担う佐賀大リージョナル・イノベーションセンターの寺本憲功センター長がパネル討議した。

 程相談役は「長く続いた仕組みを捨てることを敬遠しがち」と柔軟性に乏しい国内企業の課題を指摘。書籍市場で新しい流通網を構築する米インターネット通販大手アマゾンを例に、環境変化に対応するためには従来の発想を改め、新たなシステムを創造する必要性を強調した。

 九州経済調査協会が創立70周年を記念して佐賀銀行と共催、約100人が参加した。パネル討議の要旨を紹介する。

■人工知能活用策考えて 木村隆夫・木村情報技術社長

 薬科大学を卒業後、大手製薬会社に入社し、営業を担当した。その経験から医療現場のニーズはICTで改善できると考え、13年前にITシステム開発の木村情報技術を立ち上げた。

 製薬会社が行う医療関連の講演をインターネット配信するサービスを提供している。離島やへき地の医師も視聴でき、質疑応答はチャットで行うことができる。

 年間の利用者は50万~60万人。当初はホテルなどを借りて配信していたが、自社で専用のスタジオをつくった。今年は50社が千回以上の講演を開き、来年も既に1500回の講演配信の受注が入っている。

 米IBMの人工知能(AI)システム「ワトソン」を活用し、製薬会社のコールセンター支援システムも開発した。人工知能について、多くの企業は課題を解決する「魔法のつえ」のように思っているが、まずはどういう事業に使えるかを地道に啓発してきた。

 「音声で簡単に使えるようにしたい」などと、いきなり高度な技術を求められることもある。難易度が高いところでやろうとすると数千万円、場合によっては億単位の費用がかかる。

 このため、まずは社内問い合わせ機能のようなものから始めないかと持ち掛けている。AIを理解した上で、次の段階に進むというようにして裾野を広げていければと思う。

■技術革新稼げる農業に 友廣一雄・オプティム取締役

 パソコン購入時にインターネットに自動でつながるサービスを皮切りに事業を拡大してきた。ことし10月には、佐賀大学内に本店機能を持つ先端技術の研究拠点を開設した。1階にはカフェを併設し、農家に運営してもらうよう工夫した。

 「稼げる農業」を掲げ、佐賀県、佐賀大と連携して農業のICT化を推進している。農家に現状を聞くと「田んぼの様子を見て回るのが重労働」という。日課でありながら、あぜ道から人の目で見える範囲しか監視できないことを知った。

 農家の声をきっかけに、ドローンで田んぼの状態を把握する技術を開発した。人工知能(AI)を搭載したドローンで害虫の発生場所を判定し、農薬を散布する実験では農薬の使用量が従来の10分の1に減り、残留農薬も不検出だった。

 先端技術を取り入れた野菜のブランド化も進めている。10月にはドローンを使って栽培した枝豆を収穫。福岡市の百貨店で通常の3倍の価格で販売したが、即日完売した。

 ドローンはヘリコプターより近い場所から農薬を吹きかけることができる。散布機能を付ければ、もっと農薬の量を減らせる。ドローンの飛行時間は15分程度。広大な土地でも対応できるドローンを開発中だ。農家の作業量を減らし、収益向上に寄与できる技術開発を進めていきたい。

■人命救助にIT駆使

   寺本憲功・佐賀大リージョナル・イノベーションセンター長

 9月まで医学部の教授だった。救急の現場では1分1秒をいかに縮められるかが重要になる。生存率をはじめ、後遺症の有無や程度などその後の人生に影響するからだ。ICTも駆使しながら人を救うことに力を注いでいる。

 技術の進歩は大学にも関係する。人工知能(AI)の活用で消えていく職業があるとの予測に照らせば、学生たちが企業に入っても、いずれ路頭に迷う可能性もある。2018年を境に18歳人口は激減し、学生の奪い合いになる。社会がどう変わろうと生き残っていけるように、学生に多様性を持たせたい。

 オプティムが佐賀大に社屋を構えた効果は大きい。大学の知的財産と研究者のアイデア、IT技術の融合が期待される。どんどん企業に入ってもらい、化学反応による技術革新を起こしたい。

 診療にもITを取り入れている。佐賀大が発行しているICカードには患者の医療情報が詰まっており、他の病院でも情報を読み取ることができる。回復過程への関わりやアフターケアを含め、慢性疾患の治療に力を入れることもできる。

 情報の管理には常にリスクを伴うことを忘れてはならないが、患者さんにとって有益であるということを理解してもらい、さまざまな医療機関に反映させていきたい。

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