日本医師会の「赤ひげ大賞」を受賞した水上忠弘医師。パソコンは使わないので診察机の周りは雑然としている=伊万里市山代町の水上医院

 伊万里市山代町の水上医院院長、水上忠弘さん(73)が「日本医師会 赤ひげ大賞」を受賞した。地域で献身的に医療活動を続ける人に贈られる賞で、創設6年目で県内から初めて選ばれた。水上さんは「医師仲間や住民の協力があるから、過疎高齢化が進む地域で医療を続けられている。みんなでいただいた賞です」と喜ぶ。

水上医院は伊万里湾沿いの長崎県との県境にあり、父の一(はじめ)さんが1941(昭和16)年に開設した。水上さんは若い頃は東京で内科医として働き、39歳の時に帰郷。以来34年間、地域のかかりつけ医として住民の健康を守り続けてきた。

 医院ができた当時、この地は炭鉱と造船所で栄えていたが、戦後これらが閉鎖されると活気を失う。50(昭和25)年、約1万7千人だった山代町の人口は、現在約5千人まで減少した。高齢化率は40%に迫る。

 急速な高齢化に対応するため、水上さんは介護サービスにも取り組む。また介護予防の観点から、住民にリハビリ室を無料開放している。

 医院にある19床のベッドは満床のことが多く、ここでみとられたいと望み、亡くなっていく人も多い。小学校の校医も31年間務めてきた。「患者と一対一で向き合う時も、その人の家族状況を踏まえて話している」。地域に密着した医師の存在が、住民の安心と信頼につながっている。

 国は膨らむ社会保障費を抑えるため、地方に対し、高齢者の暮らしを地域で支える仕組みづくりを求めている。そこでは、水上さんのようなかかりつけ医の存在がますます重要になってくる。

 水上さんは「過疎高齢化が著しい地域では、医療や介護の担い手も限られており、住民も含めてみんなで助け合う関係づくりが必要になる。それは一朝一夕でできるものではない」と指摘した上で、こう言って笑った。「そのような関係の中で仕事ができている自分は、医師として幸せなのだろうね」

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