矢作穂香さん

満島真之介さん

窪塚俊介さん

 唐津市で昨年撮影された大林宣彦監督の映画『花筐/HANAGATAMI』の唐津先行上映会がいよいよ7日から始まる。出演者たちはどんな思いで演じていたのか。完成後の試写会で唐津を再訪した3人に尋ねた。

手探りして演じた「語り部」 窪塚俊介さん(榊山俊彦役)

 日米開戦の前夜、わが生を自らの意志で生きようとする青年たちの物語。主役級の榊山俊彦について、台本のト書きには「その天性の明るさは、この物語の救いだ」とある。この一文が「僕の出発点で、帰着点でもあった」とし、「ある意味浮いていて、ある意味一番地に足が着いている存在になれればいい、との思いだった」と明かす。

 大林映画の出演は5回目。元来、演技指導する監督ではなく、役の説明は「俊彦は語り部だからね」程度。「『それ、どういう意味ですか』と説明を求めれば答えてくれる。毎回、あまり多くを語ってもらえないことで、演じる側は分かりやすい挑戦ができる」

 撮影開始前日に監督が余命宣告を受け、不在のままカメラが回ることもあった。「監督が誰よりもスタッフ、キャストを信じてくれていた。悲観的になったのは病気を知らされた1日だけだった」と振り返る。

 映画の冒頭と最後に、台本になかった語りの部分が加わった。このシーンは最終日の撮影で、特別な思いがこみ上げたという。

 分かりやすい作品ではない。「難しいけど、やっぱり簡単な言葉にすれば反戦。一生懸命に生きている人間がいて、それが戦争というものに殺されるのはさみしい。案外、これはシンプルな話なんじゃないか」と語る。

私にも皆さんにも「宝物」 矢作穂香さん(江馬美那役)

 肺結核を患うヒロイン江馬美那を演じた。前に出演した映画を見た監督が、立ち姿や瞳に引かれてオファー。ニューヨーク留学から帰国直後のタイミングで、「10代最後の作品。あの大林さんの映画に出られて、素敵な宝物になった」と笑みをこぼす。

 これまで多くの若手女優をスターへと押し上げてきた大林監督。『穂香』の芸名か本名にするかで悩んでいた時期に初めて会い、「女優は一生残る仕事だから、親から授かった名前を大事に」と諭され、本名を名乗るようになった。

 役作りのために4カ月弱で8キロやせた。「最初は食べるのを我慢していたけど、美那の間はやせることに『頑張ろう』という気持ちがなくなった。それを話すと、監督に『それはもう美那だね』と言ってくださいました」。

 喀血(かっけつ)のシーンが幾度かある。いかに美しく血を吐くのかを研究。水中で仰向けになっての撮影にも体当たりした。美那の死期が近づくと、青春を謳歌(おうか)していた友人たちにも、より色濃く戦争の影が忍び寄る。

 「私も1回見ても正直分からなくて、2回目見ても全部は分からなかったけど、謎解き、パズルというか、面白いピースが増えている気がした。唐津にとっても宝だと思うので、監督もおっしゃっているけど自信を持って見てほしい」

唐津の海に溶け込んだ日々 満島真之介さん(鵜飼役)

 檀一雄の原作に「何もかも見事な少年であった」と書かれている鵜飼の役。大林監督が40年探し続けていたというイメージと一致した。自らは沖縄育ちで、祖父は米国人。戦争をテーマにした今作に「自分のアイデンティティーを包んでしまうような気持ちになれた」と撮影の日々を思い返す。

 「鵜飼は水に帰っていく青年というか、自然から生まれて自然に溶け込んでしまう神秘的なものを持っていた青年ではないか」。そう考え、2カ月間の唐津滞在中は毎日海に入り、空き時間は砂浜で過ごした。

 荒波を泳ぐシーンは台風接近のさなかに撮影された。「万全の態勢でしたけど、あれは人が死んでもおかしくないレベル。さらりと監督は編集してますけど」と苦笑。「あの波は唐津からのメッセージのような気がするし、あれで僕は溶け込んだなというところはある」と思い入れたっぷりに語る。

 作品が問いかけるものを「まだ僕もまとめ切れていないけど、自分とどう向き合っているか、何かに逃げてはいないか、という監督のメッセージはすごく強い」と解説。「あの時代を生きてきた人たちがつけてきた足跡を踏みしめ、自分たちの地盤を固めていく日本人でなきゃいけないなと思う中で、この映画の力はとても大きい」

 

上映日程

 唐津先行上映会は7~17日までに8会場で計18回あり、7日中心に出演者らが舞台あいさつする。チケットは先行上映特別価格で、前売り1200円(当日の会場購入1500円)。まいづる全店舗などで販売中。問い合わせは唐津映画製作推進委員会、電話0955(72)3278。上映日程と登壇予定者は次の通り。

【7日】13、18時半=唐津市民会館 ※13時に大林監督、常盤貴子、満島真之介、矢作穂香、原雄次郎。18時半に大林、常盤、満島、原

【8日】13、18時半=名護屋城博物館 ※ともに満島、原

【9日】13、18時=玄海町町民会館 ※ともに満島、原、14時=大手口センタービル・オーテホール

【10日】13時=相知交流文化センター ※満島、原

【13日】14時=オーテホール

【14日】13、18時半=唐津市文化体育館 ※ともに窪塚俊介

【15日】13、18時半=唐津市文化体育館 ※13時に窪塚

【16日】13、18時=浜玉町ひれふりランド、14時=オーテホール

【17日】13、18時=肥前文化会館

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