ROCK PARK SAGAで圧巻のステージを見せるズボンズのベーシスト、マッチさん

舞台を降りると礼儀正く落ち着いた26歳の素顔を見せるマッチさん=佐賀市松原のライブハウスRAG-G

 わき上がるグルーヴをギターとマイクにぶつけるボーカリスト、ドン・マツオさんの隣で黙々とベースに向かう黒髪の女性。彼女が、海外でも活躍するオルタナティブ・ロックバンド「ズボンズ」ベーシストのマッチさん(26)=佐賀市出身=だ。10月に佐賀市中心部で催された音楽イベント「ROCK PARK SAGA2017」に出演した彼女に、バンド加入の経緯や現在の日々、故郷佐賀への思いを聞いた。

 ズボンズはギターボーカルのドン・マツオさんを中心に、1994年に結成された。正統派ロックにヒップホップやエレクトリックな要素を詰め込み、ファンキーなステージで国内外のファンを魅了する。2012年に活動を休止させた後、オリジナルドラマーのブッカビリーさんと新人ベーシストのマッチさんを迎えて15年に再始動した。

 マッチさんは、ズボンズ休止中にドンさんが日本各地で展開していたソロツアーの佐賀公演でドンさんと初めてステージを踏んだ。そこで「こんなかっこいい音楽をやっている人がいる」と衝撃を受けたという。

 ズボンズがベーシストを募集していることを知り、マッチさんの中で音楽への思いがふくらんだ。

 「『やりたい』という今の気持ちに素直でいたほうが、後悔しないと思った」とマッチさんは当時を振り返る。15年2月にズボンズへ加入したマッチさんは同年4月、バンドの海外ツアーでカナダにいた。

 初めてのツアー、初めての海外、目が回りそうな日々だった。メンバーの運転で、地平線が見える広い大地を走った。英語がわからずボディーランゲージで会話をした。ズボンズのファンは海外にも多く、聴衆は「待ってたよ」と両手を広げて迎えてくれた。

 右も左もわからないまま経験した海外ツアーは、マッチさんにとって大きな転機になった。今回の経験で一回りたくましくなり、「乗り越えたら何でもやれる気がした」と笑う。

 圧倒的な“熱”を放つドンさんの隣で、マッチさんは職人のようにベースに向かう。長めのボブに切りそろえた黒髪を揺らし、白い肌を紅潮させることもなく音楽に寄り添い黙々と演奏をこなす様子は、うねる爆音に反して“静けさ”さえ感じさせる。

 ドラムのブッカビリーさんは、マッチさんを「努力家で頑張り屋さん」と評する。マッチさんはベテランのメンバーやスタッフに囲まれて、「一度指摘されたことは二度と言われない」気合で日々の活動に挑んでいるという。

 10月7日、ドンさんはRAG―G(佐賀市松原)のステージから観客に呼び掛けた。「音楽を好きかどうかは、人間性に関わる。どうか音楽を好きでいる人生を選んでください」。マッチさんは、そうしている。

 東京で空を見上げると、ビルの隙間から小さな空が見える。その空も好きだが、頭上いっぱいに広がる佐賀の青空も思い出す。

 離れて初めて、故郷の空の広さを知った。それをマッチさんは「空に包まれているみたい」と言い表す。

 マッチさんは「東京でのチャレンジが全部終わったら、きっと佐賀に帰ってきたいと思う」と笑顔を見せる。やりたいことが多すぎて、終わりのめどはまだ立たない。東京で故郷の大空を思いながら、着実に目の前のことをクリアして前に進んでいる。

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