武雄市が今秋からデジタル教科書の実証研究を始めた。文部科学省の方針では、2020年度から全国の学校でデジタル教科書の使用が可能になる。教育現場へのICT(情報通信技術)の導入が進んでいる。機器の整備とともにデジタル教材の研究など、教える側のスキルアップも欠かせない。

 武雄市のデジタル教科書研究は10月からで、小学4年と中学1年の国語、算数・数学を対象にしている。全小中学生に貸与しているタブレット端末を活用し、来年3月まで各科目で80~120コマ程度の授業を行う。共同研究者の東洋大、教科書会社とともに効果や課題を検証する。

 武雄市のタブレット端末は2014年度、家庭で予習して授業に臨む「反転授業」を実施するために導入された。小学生で始まった反転学習は15年度には中学生にも広がっている。児童・生徒は既にタブレットの扱いに慣れ、先生も電子黒板とうまく連動させながら授業を進めている。

 小中学生全員にタブレット端末を配備しているのは、佐賀県内では武雄市だけ。県教委が今年8月現在でまとめた県内各市町の学習用情報端末(パソコン、タブレット)の整備状況によると、端末1台あたりの児童・生徒数は武雄市の小中学生がいずれも1人1台以上ある0・7人となっているのに対し、最も整備率が低い町は27・2人。小中学生いずれかで10人を超えているのは7市町に上るなど、ばらつきがある。

 一方、電子黒板の整備率は学級数との比較でほとんどの自治体が100%を超え、100%未満の3市町も95%以上と大きな差はない。同じICT機器でも違いが際立っている。タブレット端末整備の難点は費用で、武雄市が今年、2千台を更新するためにかけた費用は1億6千万円余り。負担は大きい。デジタル教科書導入には1人1台が理想とされる。国が推進するのであれば、補助や助成を含めた対応が論議になる。

 機器整備とともに課題となるのが、先生のICT機器を活用するスキルだ。例えば、デジタル教科書には理解を手助けする多様な機能がある。画面上で図形を動かして面積を比べたり、漢字の筆順テストなど多彩だ。デジタルの特性と機能をどのような形で理解につなげていくのか。東洋大の斎藤里美教授は、文字拡大や音声読み上げ、学習履歴の保存、フィードバックなどデジタル教科書の利点を挙げると同時に、「指導者の活用力も問われる」と話した。

 昨夏、他県から武雄市にICT教育の視察に訪れた教諭は、タブレット端末の画面を電子黒板に表示して、児童の意見を次々に引き出していくタブレット連動の授業展開に「経験がない」と高い関心と不安を示した。一方、デジタル教科書を試行する武雄市の教諭は、画面上で立体を回転させたりできるタブレットの利点を挙げながらも「実際に積み木などで立体を感じさせることも大切」と指摘する。先行する自治体の先生の経験を生かす仕組みも欲しい。

 教育現場へのICT機器導入はさらに広がり、授業の様子を変えていくだろう。機器整備や先生の力量で学びに差が出ることはできるだけ避けなければならない。大学を含め、一層の対応が必要になっている。(小野靖久) 

このエントリーをはてなブックマークに追加