インターネット上に「死にたい」などと書き込む若者の苦悩に、いかに寄り添うか。神奈川県座間市のアパートで若者9人の切断遺体が見つかった事件を受け、ネット相談の拡充の必要性を指摘する声が高まっている。自殺対策に取り組む関係者らは「ニーズは多く、対応する機関や人材が不足している」と訴える。

 東京・高田馬場にあるNPO法人「OVA」の事務所。数人のスタッフがパソコン画面で黙々と作業していた。4年余り前からネットで、自殺願望のある若者らの相談を受け、専門機関につなぐなどの支援をしている。

 相談員は臨床心理士や精神保健福祉士ら4人で、これまでに対応したのは約600人。ただ、代表理事の伊藤次郎さんは「連絡をくれる人のごく一部です」と話す。最近、ある会員制交流サイト(SNS)に「死にたい」と書き込まれた回数を調べると、1日で約1万5千回だったという。

 座間市の事件でも、亡くなった人の多くがツイッターなどで自殺願望を漏らしていた。殺人の疑いで再逮捕された白石隆浩容疑者(27)が、その書き込みを見て「一緒に死にますか?」などと誘い出したとみられる。

 総務省の調査では、10代、20代の人は電話やメールより、ツイッターやLINE(ライン)などのソーシャルメディアを利用する時間が、圧倒的に長かった。

 伊藤さんは「相談すること自体が大変なのに、普段使わない電話でとなるとハードルが高い。自殺リスクのある若者を支えるには、ネット上の受け皿を用意せざるを得ない状況」と指摘する。

 従来、相談機関では対面や電話での対応が主流だ。国の自殺対策の指針で、今年7月に策定された新たな自殺総合対策大綱には、ネットを活用した若者支援の強化などが盛り込まれたが、「対策は、これから具体化させていく段階」と厚生労働省の担当者。

 NPO法人「チャイルドライン支援センター」は、18歳以下の人を対象に9月から毎月、チャットの相談窓口を開設。代表理事の神仁(じん・ひとし)さんは「文字だけでのやりとりは、電話と比べ情報量は圧倒的に少ない上、時間がかかる。一方で匿名性が高く、本音を出しやすい利点もある」と説明する。

 対応できる人材の養成を急いでいるが、主にボランティアや寄付に頼っているのが実情。神さんは「SNSの事業者にも社会的責任がある。もっと積極的に、この問題に取り組んでほしい」。

 若者の問題や犯罪心理に詳しい、こころぎふ臨床心理センター長の長谷川博一さんは「加害者になる恐れがある人も含め、孤立する若者をネット上で受け止める仕組みが必要。国が人材養成に予算を割き、本腰で取り組む時だ」と指摘する。【共同】

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