カナダのシンボル、カエデをあしらった着物を峰達郎唐津市長に説明する高倉慶応さん(左から2人目)と田中勝幸さん(同3人目)=11月29日、唐津市役所

 2020年東京オリンピック・パラリンピックに向けて参加196カ国・地域をイメージした着物を制作する「KIMONO PROJECT(キモノプロジェクト)」が唐津で始動する。相手国は内戦で子どもをはじめ多くの市民が犠牲になった東欧の小国ボスニア・ヘルツェゴビナ。首都サラエボと市内の小学校の交流がきっかけとなり、「スポーツの祭典を世界平和への懸け橋に」という五輪本来のメッセージを着物に託す。

 プロジェクトは「着物で世界を一つに」と福岡県久留米市の呉服店主高倉慶応さん(49)が14年、一般社団法人「イマジンワンワールド」を設立して提唱。各地域が所縁のある国の着物を市民や企業と連携して作る仕組みで、アンデルセン公園がある千葉県船橋市はデンマークを受け持つなど、既に60カ国分が完成し40カ国分が制作中だ。

 唐津市では唐津商工会議所が中心となって着物や茶陶、茶道など「和文化の薫るまちづくり」を提唱しており、高倉さんらが制作を打診。候補国を探す中で、大志小が14年から交流を重ねるボスニア・ヘルツェゴビナが浮上した。

 ボスニア・ヘルツェゴビナでは1992年、独立と民族間の対立が絡んで内戦が勃発。首都サラエボ包囲戦は市民が無差別に殺りくされ、84年のサラエボ冬季五輪施設も破壊されるなど深い傷跡を残している。

 この間、大志小では平和を願う絵画を相互展示し、昨年はサラエボの子ども3人が唐津を訪問した。厳木町出身で、橋渡しをしてきた人道支援団体「イピル・イピルの会」(東京都)代表の伊藤登志子さん(72)=旧姓鶴田=は「思いが着物という形あるものになり、うれしい限り」と喜ぶ。

 来年秋の完成を目指し、費用は着物、帯の制作費を含め300万円。商工会議所に事務局を置き、市民や団体、企業に寄付を呼び掛けるとともに、旧大島邸などを会場に各国の着物展示会やファッションショーを計画。金子財団の支援を受け、唐津市とも連携していく方針で、11月29日には峰達郎市長に支援を要請した。

 高倉代表は「戦争の惨禍と平和の希求を土台にした唐津の取り組みはプロジェクトの象徴そのもの」と評価。地元中心メンバーとなる呉服店主の田中勝幸さん(67)は「着物が似合う唐津の風土を内外に発信する機会にもしたい」と話す。問い合わせは唐津商工会議所、電話0955(72)5141。

=ズーム= ボスニア・ヘルツェゴビナ

 東ヨーロッパ・バルカン半島北西部に位置し、人口約350万人。1992年、ユーゴスラビアからの独立の可否や国のあり方を巡って3民族間で内戦が発生。95年の終結まで死者20万人、難民・避難民200万人に上り、第2次世界大戦後のヨーロッパで最悪の紛争となった。

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