顧客目線や業務を見直す大切さについて語る小島俊一氏=佐賀市のホテルニューオータニ佐賀

蒲原英樹さん

■常に問いかけ、改善を

 佐賀新聞社が主催する佐賀政経懇話会と唐津政経懇話会(11月28、29日)で、明屋(はるや)書店前代表取締役で元気ファクトリー代表の小島俊一氏が「『社員を大切にする元気な組織の作り方』~地方元気企業ランキング日本一の秘密~」と題して講演した。経営危機だった書店をV字回復させた経験を踏まえ、顧客目線や業務を常に見直すといった企業再建のヒントを語った。講演要旨を紹介する。

 2013年、愛媛県松山市の明屋書店に出向した。創業家が手放すようなひどい経営状態。当時、年商140億円、80店を展開していたが、5年連続赤字だった。今は2億円の利益を出すまでに回復した。

 経営には三つの要素がある。ファイナンス、マーケティング、そして最も大事なマネジメント。“企業は人なり”というのに、マネジメントはあまりにも軽視されている。

 出向後、従業員に出版業界の過去20年の売り上げ推移を示しながら、「出版界には未来がない」と告げた。この推移から分かることはもう一つある。変わらないことが最大のリスクだということ。外的要因がよくないのはあらゆる業界でも一緒。「街中の本屋がつぶれても明屋だけは生き残る」と従業員に伝え続けた。

 「従業員はコストか財産か」という経営学者ドラッガーの問い掛けがある。コストと思えば切り捨て、財産だと思えば大切にする。どちらが正しいとかではない。経営する中でその立場を明確にしようと思った。従業員を財産だと思い、一人もリストラしないで経営再建することを考えた。

 私は「あなたの会社は何を売っている会社ですか」という質問を投げ掛ける。コンビニは「便利」を売っている。ドラッグストアは「健康」を売っている。

 あるとき運送会社の社長に聞くと「信頼を売っている」と答えた。観葉植物のレンタル会社は「癒やしを提供している」と言った。癒やしという大きな枠組みで考えるようになり、絵画をレンタルするなど仕事の幅も広がった。今日と明日で答えが違ってもいい。常に考えることが重要だ。

 利益を出す一番の近道はコスト削減。LED照明を全店舗に入れようと思ったら、2億5千万円かかる。そんな金はない。レンタルにして、新電力に変えることで、年間3400万円のコストカットにつながった。未導入であれば、入れない選択肢はない。人員シフトも見直し、客足が途絶える時間帯はパートを入れず、年間の人件費を8640万円削減した。

 出向時、新入社員と10年働いた社員の給料がほとんど変わらなかった。残業代も出ず、労基署の立ち入りがあるようなブラック企業。コストカットで捻出した費用は、賃金に充てた。正当な賃金カーブを確立できなければ経営者として失敗だと考えたからだ。

 明屋書店は80店あるので、すべての店の改革案を持ち合わせていない。私は「何を仕入れてもいいし、どうやってもいい。まずはとにかく誇れる店をつくれ。どうするかは自分たちで考えて」と各店長に任せた。各店舗は農産物や子どもの古着を販売、学習塾を併設するなど、特色ある地元密着の店に変わった。

 「○○屋はつぶれる」とよく言っている。売り方、売り先、売る物を新たに考えて時代の変化に対応しなければいけない。

 なぜお客さまが自分の会社を選ぶのか、なぜ売り上げが落ちたのかなど、常に問い掛け、経営改善につなげていく必要がある。働きやすい職場が成果向上を支える。経営者は常にビジョンを語り、社員を支援し続ける使命がある。

=講演を聴いて=

JA信連JAバンク推進部長

蒲原 英樹さん

 企業は人で成り立っているというところに共感した。人づくりをいかにするか考えることが大切だ。物を売ることではなく、顧客に満足を与えられる企業になるかを常に考えないと。変わらないのが一番のリスクという言葉があったが、常になぜと問い掛け、見直し、変化し続けたい。

このエントリーをはてなブックマークに追加