江戸時代の光格天皇以来、約200年ぶりの退位が実現する。天皇陛下の退位日と、皇太子さまが新天皇として即位する日が決まった。「平成」は31年4月30日で幕を下ろし、5月1日からは新たな元号がスタートする。

 昨年、天皇陛下がビデオメッセージという形で示された「お気持ち」は、私たち国民に大きな衝撃を与えた。「身体の衰えを考慮する時、これまでのように、全身全霊をもって象徴の務めを果たしていくことが、難しくなるのではないか」と率直に吐露し、「社会の高齢化が進む中、天皇もまた高齢となった場合、どのような在り方が望ましいか」と投げかけられた。

 進む高齢化-。それは、私たちの社会が直面している課題そのものである。国民の多くが、陛下の問いかけを真剣に受け止め、共感し、「ゆっくり休んでいただきたい」と退位を支持したのも当然だろう。

 皇室会議でどのような議論が交わされたかは明かされなかったが、年末や年度末を避けた選択は理解できる。「国民の暮らしへの影響」を抑えつつ「静かな環境」で代替わりするという考え方を優先したわけだ。

 ただ、ここまでの議論で置き去りにした課題もあるのではないか。

 ひとつは、今回の退位が「陛下一代限り」の特例法の下で進んでいる点である。もちろん、速やかな退位を実現するためという事情は分かるが、高齢化は今だけの課題ではない。「終身在位」が大きな負担を強いているという現実が明らかになった以上、特例法ではなく、いずれは退位を制度化する必要があるのではないか。

 また、退位により、これまでは想定していなかった新たな課題も浮上してくる。いわゆる「権威の二重化」である。

 同じ時代に「上皇」と「天皇」、いわば2人の天皇が存在する形になる。上皇は「象徴としての役割」をすべて新天皇に譲ることになるが、私的行為まで制限されるわけではない。

 場合によっては、天皇を上回る権威が存在しかねないという懸念が指摘されている。この点をきちんと整理しておくべきだ。

 そして、何よりも大きな懸案は、将来的に皇室をどう維持していくのかというテーマである。

 皇太子さまが天皇に即位されれば、皇位継承者は第1位の「皇嗣」に就かれる秋篠宮さま、第2位の悠仁さま、そして陛下の弟宮である常陸宮さまの3人になる。

 陛下の孫世代は悠仁さまだけで、このままではたったひとりで皇室を担うという深刻な事態も考えられよう。しかも、それは決して遠い未来の話ではない。

 このまま皇族が減り続ければ、天皇家が断絶しかねない。事態の深刻さを考えれば「女性宮家」の創設や、「女性天皇」の議論にまで踏み込むしかないのではないか。いつまでも先送りせず、皇室をどう維持していくのか、議論を急いでもらいたい。

 天皇陛下が示してこられた「国民と寄り添う象徴天皇」の姿は、国民の広い支持を集めてきた。新たな時代の新たな皇室像をどうつくり上げていくか。私たち国民も主権者としてしっかり考えていく必要がある。(古賀史生)

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