佐賀新聞社の県内企業経営動向調査(2017年7~9月期)では、前年同期比で売上高が「増加」した企業が「減少」した企業を4期連続で上回った。製造業は「増加」が3期ぶりに40%台に達し、設備投資も活発だった。一方で、前回好調だった非製造業は業績回復の足取りが鈍くなっている。

 内閣府が発表した7~9月期の国内総生産(GDP)速報値は、物価変動を除く実質で前期比0・3%増となり、年率換算は1・4%増で7四半期連続のプラス成長となった。

 今回の調査結果を見ると、500万円以上の設備投資を行った企業は前期比1・0ポイント増の48・5%。食品や機械・金属、医薬品などの製造業が意欲的で、次期も5割が計画している。操業度の平均値も前期から2・7ポイント上昇した。

 一方、非製造業は、売上高が「増加」した企業が1年ぶりに40%を下回り、経常利益も4期ぶりに低下した。消費者の根強い節約志向を受けて卸売などが利益確保に苦しんだ。

 経営上の問題点では「労働力不足」が50・0%に上り、3期連続でトップになった。すべての業種が課題に挙げ、特に運輸・通信や建設、サービス・レジャーで深刻さが増している。

非製造業、足踏み状態 売上高  

 前年同期比で「増えた」は前期比2・8ポイント減の38・2%で、2期ぶりに低下した。「減った」は1・5ポイント減の25・5%。5期連続で低下し、2014年1~3月期の20・4%に次ぐ低水準だった。前期は増収が多かった非製造業で足踏み状態となった。

 製造業は「増加」が9・1ポイント増の43・2%で、3期ぶりに上昇した。40%台まで回復するのも3期ぶり。「減少」は8・8ポイント減の20・5%と2期連続で低下した。増収は電気・電子で8割、医薬品で5割に上り、縫製を除く全業種で3割以上が「増加」と答えた。

 非製造業は、「増加」が11・3ポイント減の34・5%。2期ぶりの低下で40%を1年ぶりに下回った。「減少」は3・9ポイント増の29・3%で、卸売は4割に上った。全業種で「増加」と「減少」に分かれるなど同じ業種で明暗が分かれた。

 次期見通しは「増える」が38・2%、「減る」が13・7%となっている。

「増加」「減少」とも増 経常利益

 前年同期比で「増えた」は前期比0・6ポイント増の35・6%で、2期連続で上昇した。「減った」は4・7ポイント増の32・7%で、2期ぶりに上昇。全体的には収益改善に向かいながらも、原材料高や受注競争の激化などで「増加」と「減少」の差が縮小した。

 製造業は「増加」が4・8ポイント増の34・1%。2期連続で増える一方、「減少」も2・5ポイント増の31・8%と2期ぶりに上昇した。医薬品、酒造、機械・金属の5割が「増加」と回答。電気・電子は「増加」「減少」が半数ずつで、縫製は6割超が「減少」とした。

 非製造業は、「増加」が2・2ポイント減の36・8%で、4期ぶりに低下。「減少」は6・2ポイント増の33・3%で3期ぶりに上昇し、卸売で7割に上った。

 次期は36・6%が「増える」、19・8%が「減る」とみている。

製造業積極的、実施過去最高 設備投資

 500万円以上の設備投資を行った企業は前期比1・0ポイント減の48・5%。4期ぶりに低下したものの、5期連続で40%以上の高水準を維持した。特に製造業で積極的なところが多く、実施企業は65・9%と過去最高水準だった。

 製造業で実施した企業は9・8ポイントの増。2期連続で上昇し、食品製造で9割、機械・金属、医薬品で7割以上に上った。非製造業は9・5ポイント減の35・1%で、2期連続のマイナス。実施企業は運輸・通信で6割を超える一方、卸売の9割、建設関連の8割が未実施で、金融、大型店も消極的だった。

 次期は50・5%が実施を計画。機械・金属、運輸・通信、医薬品などで意欲的な企業が目立つ。

多くの業種で改善 自社の景況感

 前期比で「良くなった」は3・2ポイント増の26・2%。2期連続で上昇し、「悪くなった」は5・4ポイント減の12・6%に低下した。製造業、非製造業ともに「良くなった」が増え、多くの業種で改善傾向がうかがえた。

 製造業は「良くなった」が2・7ポイント増の29・5%、「悪くなった」は10・4ポイント減の9・1%。非製造業は「良くなった」が3・4ポイント増の23・7%、「悪くなった」が1・6ポイント減の15・3%だった。

 業種別では、機械・金属、電気・電子、大型店の5割以上が「良くなった」と回答。陶磁器製造、建設関連では悪化が目立った。

 前年同期比では、「良くなった」が0・1ポイント増の29・1%、「悪くなった」は5・0ポイント減の18・5%。次期は「良くなる」が27・2%、「悪くなる」が9・7%で、製造業で明るい見方が増えている。

受注改善2.7ポイントアップ 操業度

 現有人員で最大可能な操業度状態を100とした場合の平均は87.6。前期から2.7ポイント上昇した。受注環境の改善や人手不足感の高まりなどから、100を超えた企業も6.4ポイント増の42.8%に上った。

 前期比で「上昇した」と答えた企業は4.4ポイント増の23.5%。医薬品や食品製造、電気・電子で目立ち、「低下した」は13.5ポイント減の7.8%だった。前年同月比では、「上昇した」が5.6ポイント増の33.3%、「低下した」は0.8ポイント増の14.9%だった。

 次期は、39.2%が「上昇する」と回答。「低下する」は5.9%にとどまっている。

「労働力不足」最多5割 経営上の問題点

 最も多かったのが「労働力不足」で、前期比3.1ポイント増の50.0%。割合はこれまでで最も高く、3期連続でトップだった。製造業、非製造業ともに約半数が課題に挙げており、幅広い業種で深刻化している。

 業種別では、運輸・通信の8割、建設とサービス・レジャーの6割以上が「労働力不足」と回答。卸売と機械・金属は前期から30ポイント近く上昇する一方、陶磁器製造と医薬品、建設関連、金融は20%台だった。

 2番目に多かったのが、「設備の老朽化」で37.3%。「従業員教育」が35.3%で続いた。サービス・レジャーでは「人件費高」も目立ち、金融の約6割が「利益率の低下」「販売・受注競争の激化」を課題に挙げた。

「上昇」増コスト高顕 著仕入れ価格

 前年同期比で「上がった」と答えた企業は18.2ポイント増の42.1%。9.1ポイント減だった前期から一転、大幅増となった。「下がった」は2.6ポイント減の4.2%にとどまり、原材料や製品の仕入れコスト高が顕著になっている。

 製造業、非製造業ともに上昇したところが多く、電気・電子、縫製、サービス・レジャーで6割以上に上った。機械・金属、食品製造、運輸・通信も5割を超え、低下した企業は全体で4社にとどまった。

 次期は、37.9%が「上がる」と回答。「下がる」と答えたのは金融、卸売の計2社だけだった。

調達環境の悪化進む 資金繰り

 前期比で「楽になった」と答えた企業は5.7ポイント減の5.2%で、4期ぶりに減少。「苦しくなった」は0.6ポイント増の8.2%と2期連続で増加し、製造業を中心に資金調達環境の悪化が顕著になってきている。

 製造業は「楽になった」が10.2ポイント減の2.3%、「苦しくなった」は4.1ポイント増の11.6%。縫製、酒造で「苦しくなった」が目立ち、非製造業は「楽になった」が2.2ポイント減の7.4%、「苦しくなった」は2.1ポイント減の5.6%だった。

 次期は、7.2%が「楽になる」、10.3%が「苦しくなる」とみている。

非製造業で「価格転嫁」 製品価格

 前期比で「上がった」は0.2ポイント増の14.0%で、わずかながらも3期連続で上昇した。「下がった」は1.5ポイント減の6.5%と2期ぶりに低下。原材料価格の上昇などで、非製造業を中心に価格転嫁が進んだことがうかがえる。

 製造業は「上がった」が3.0ポイント減の7.0%、「下がった」が0.3ポイント減の4.7%。非製造業は「上がった」が3.0ポイント増の20%、「下がった」は2.6ポイント減の8.0%だった。業種別では、卸売とサービス・レジャーの3割が「上がった」と回答。金融は全社が「下がった」とした。

 次期は、18.3%が「上がる」とみており、卸売、食品製造などで目立った。「下がる」は5.4%にとどまっている。

先行きに明るさ感じる 国内景気見通し

 次期見通しは「良くなる」が前期比16.1ポイント増の25.2%、「悪くなる」が同2.8ポイント増の6.8%。3期連続で「良くなる」が「悪くなる」を上回り、景気の先行きに明るさが感じられる結果となった。

 製造業は「良くなる」が19.3ポイント増の31.8%、「悪くなる」は1.8ポイント増の6.8%。非製造業は「良くなる」が13.5ポイント増の20.3%、「悪くなる」は3.4ポイント増の6.8%だった。業種別では、機械・金属の5割、金融、食品製造の4割が「良くなる」と答えた。

 次々期(18年1~3月)は、16.5%が「良くなる」と回答。「悪くなる」を7.8ポイント上回っている。

調査結果を見て      

経済の好循環に期待 陣内 芳博氏(佐賀銀行頭取)

 県内経済は、個人消費において飲食料品の堅調な推移や耐久財の買い替え需要増加のほか、自動車販売の新型車投入効果も継続している。観光面では九州北部豪雨の影響があったものの、訪日外国人観光客は昨年を上回るペースで伸びており、個人消費全体としては緩やかに回復している。

 今回の調査結果を見ると、「売上高」「経常利益」は前回調査に引き続き好調を維持しており、設備投資も引き続き意欲の継続がみられ、景気の見通しについても景気回復への期待感がうかがえる。

 先行きについては、人手不足感が高まる中、企業活動に及ぼす影響について注視するとともに、海外経済の不確実性に留意する必要がある。今後は、景気拡大持続による企業収益の改善が賃金の上昇につながる経済の好循環の動きに期待したい。

 

景気回復実感乏しい 二宮洋二氏(佐賀共栄銀行頭取)

 7~9月のGDP(実質)は、7四半期連続のプラス成長となった。県内においても、個人消費や生産活動などは堅調に推移しており、県内景気は緩やかな回復傾向にある。

 今回の調査結果を見ると、7~9月の売上高および経常利益の実績は、ともに「増加」が「減少」を上回っている。主要業界の景気天気図でも機械・金属、電気・電子を中心に好調とある。

 一方で、企業業績が好調な割に給与は伸びず、景気回復の実感は乏しい。また、今後も労働力人口の減少による人手不足は続くと考えられ、企業の成長を阻害することが懸念される。

 各企業には、外部環境に配慮しつつ、IT(情報技術)の導入による効率化などの生産性向上、競争力強化に資する取り組みを期待したい。

 

回復の足取り緩やか 福母祐二氏(県経営者協会専務理事)

 我が国経済は、7~9月期のGDPの伸びが0・3%増ではあるものの、その足取りは緩やかである。

 今回の調査結果では、操業度が上昇した製造業が持ち直した一方、猛暑や大雨に加えて消費性向(可処分所得に占める消費支出の割合)の二極化などにより、非製造業はやや悪化している。こうした状況を受け、年末賞与の交渉は前年を下回って推移している。

 労働力不足、設備の老朽化、従業員教育など経営上の課題を抱え、さらには今回上昇した仕入れ価格を吸収、または製品価格に転嫁できるかが気掛かりである。

 今後は、ものづくりやサービスの「基本」を踏まえ、働き方の見直しなどを含めた魅力ある企業づくりを進めるとともに、AI(人工知能)の導入など人口減少を見越した取り組みが欠かせない。

 

人手不足の影響注視 樋口光雄氏(佐賀財務事務所長)

 2017年7~9月期の実質GDPは前期比0・3%増(年率1・4%増)で、7四半期連続のプラス成長となっており、わが国の景気は緩やかな回復基調が続いている。

 調査結果を見ると、前回に続き、売上高、経常利益とも増加が減少を上回っており、設備投資も約半数の企業が行うなど、県内景気が回復基調にあることをうかがわせる。他方、経営上の問題点として、半数の企業が「労働力不足」を挙げており、人手不足が企業活動に及ぼす影響をより注視していく必要がある。

 政府は新しい経済政策パッケージを12月上旬に策定するほか、災害対応をはじめとする財政需要に対応するため17年度補正予算を編成するとしている。こうした政策の効果もあいまって、景気が緩やかに回復していくことが期待される。

 

採算性の動向に留意 増渕治秀氏(日本銀行佐賀事務所長)

 今回の調査結果を見て、「県内の景気は緩やかに回復している」と確認できた。すなわち売上高、経常利益とも前年比で増加した企業は4割弱に達し、景況感が前期比で改善した企業も3割近くになるなど企業マインドは底堅いからだ。

 特に製造業では、国内外の需要増を背景に操業度の上昇が寄与したとみられるほか、金融環境が極めて緩和した状態が続く中、老朽化や人手不足への対応としての設備投資に積極姿勢がみられる。

 次期については、原材料・製品の仕入れ価格の上昇を見込む先が4割近くに達する一方、製品価格の上昇を見込む先は2割弱にとどまるなど、仕入れ・製品価格や採算性の動向に留意していく必要がある。半数の企業が経営課題に挙げる人手不足の影響も注視していく。

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