安倍政権が「人づくり革命」の柱とする教育支援策をめぐる調整がヤマ場に差し掛かってきた。「国難」に対処するとして、財政健全化を先送りして確保した貴重な財源をいかにして有効活用するか。ゆめゆめ「ばらまき」に雲散霧消させてはならない。この国の将来を見据え、本当に困っている世帯、子どもたちに確実に支援が届くようにしたい。

 主な財源は2019年に10%に引き上げる消費増税による増収分。借金返済に充てることが決まっていたが、安倍晋三首相(自民党総裁)は、子育て支援への使途変更を打ち出し、国民に「信を問う」として衆院を解散、選挙で勝利を収めた。

 首相が衆院選の公約で、政策規模を2兆円とし、3~5歳児の幼稚園・保育所を全て無償化、0~2歳児は低所得者に限定して無償化するなどとした大枠を示した。その後、消費増収からの1兆7千億円に、経済界が負担する3千億円を加えた「2兆円の政策パッケージ」として与党が制度設計に着手、具体的な支援対象、金額などについて協議してきた。

 0~2歳児については住民税非課税世帯を対象にする方向で検討が進んでいるが、3~5歳児については、認可外保育所に通う世帯への助成額に上限を設けるものの所得制限は適応せず、約8千億円投じて原則、全面無償化する方針だ。

 しかし、これでは、政策の的を外すことにならないか。認可保育所の利用料は、収入に応じて高くなる設計だ。高い利用料を払っている高所得世帯はこれを免除される。つまり、支援の必要性が乏しい高所得世帯ほど多くの恩恵を享受できることになる。

 限られた財源だ。加えて、公費を投入することによって世帯間の可処分所得の差が拡大する事態は好ましくない。やはり所得制限を導入すべきだろう。それぞれの所得によって無償化になる世帯もあれば、負担が変わらない世帯もある。こういう姿にせざるを得ないのではないか。子どもたちの教育・保育へのアクセスを改善しながら、トータルとして格差を是正する方向につなげたい。

 無償化の前に、そもそも受け入れ可能な人数が少ないため、保育所などに入れない世帯がある。育児施設の収容規模が需要を下回っているのは、厳しい運営状況などから参入を見送る流れが続いてきたためだ。保育士のなり手が足りないのは報酬の低さも影響している。

 利用料が無料になっても、こうした状況が改善されず、入れなければ意味がない。現行案で高所得世帯の支援に回るはずだった資金を、待機児童解消の加速化に充当する考え方もあるだろう。認可外保育所などに対する助成金に上限を設ける考え方が浮上してきたことは、選挙公約段階の全員無償化が有権者向けの「甘言」だったことを浮き彫りにしたとも言える。

 しかし、こうした修正に目くじらを立て公約違反と非難するつもりはない。大事なことは本当に必要なところに支援が行き渡ることだ。

 子どもたちにとっていいことだけだろうか。今回の財源は借金返済に充てる資金から捻出するのだから、先送りされた負担は、将来の世代、支援を受ける子どもたちの背中にのしかかってくることになる。大人はそこにも思いを致そう。(共同通信・高山一郎)

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