今後6年間、国のがん対策の指針となる「第3期がん対策推進基本計画」が閣議決定された。

 がんの予防に力を入れていることが大きな特徴だが、がんになっても、自分らしく生きていける地域共生社会の実現もうたっている。そこに「緩和ケア」が位置づけられ、がんと診断された時から始めることが一層強められている。

 身体的、精神的な痛みを和らげる緩和ケアの重要性は年々増している。がんは、いまや「死に直結する病気」ではなくなってきているものの、患者の心身の負担はまだ重いと言わざるを得ない。緩和ケアは終末期だけと思われがちだが、本当は診断された時からのケアが大切である。

 完治が望める場合でも、治療後の再発不安への心のケアや、生活の質(QOL)の維持、向上などの支援が必要だ。

 完治が期待できない場合、主治医が緩和ケア病棟への移動を勧めると、「見放された」と感じるケースもある。緩和医療に移るタイミングが難しいとされ、このつなぐ体制が機能していないとの指摘がある。今後も医師、看護師などスタッフ全体の力量アップとともに、一人一人の患者と相対する時間をゆっくり持てるような体制づくりも求められる。

 患者側も、忙しい医療スタッフに、相談したり尋ねるのをためらうのではなく、不安感や疑問点を気軽に投げかけ、返してもらう。双方で信頼を築き上げていければ、患者も家族も救われる。ひいては良い医療にもつながる。

 県内では、佐賀大学医学部附属病院▽県医療センター好生館〓唐津赤十字病院〓国立病院機構嬉野医療センターの四つが、がん診療連携拠点病院になっており、それぞれに緩和ケアチームが設置されている。

 厚生労働省は2008年から緩和ケア研修会を開くなど、医師の技能向上に取り組んできた。佐賀県では16年度までに医師762人、看護師などを含めると1436人が研修を受けている。これらは拠点病院の医療スタッフが中心で、地域を含めると、まだ十分な数は養成できていない。

 緩和ケア病棟があるのは、好生館(佐賀市、15床)〓河畔病院(唐津市、18床)〓西田病院(伊万里市、20床)〓なゆたの森病院(佐賀市、20床)の四つ。全体で73床という数は、人口対比でみると全国平均より、若干多いという。

 しかし、最近は延命を望む人ばかりではなく、痛みを和らげ、穏やかな日常を希望する患者は増えている。緩和ケア病棟への入院を望みながら、多くが地域の一般病院で亡くなっている現状を踏まえれば、まだ不足感がある。誰もが希望した時点で、専門病棟を利用できる環境が望まれる。そうできれば患者、家族も安心し、落ち着いた療養生活を送れる。

 一方で、緩和ケアチームについては、組織体制こそ整備されつつあるものの、ケアの質の評価にまでは至っていないのが現状だ。医師と看護師だけでなく、ソーシャルワーカーやリハビリなどケアにかかわるスタッフの育成充実も忘れてはいけない。

 緩和ケアとは悩む家族への支援も含む。人にやさしい医療がその本質といえる。地域全体でケアの力を上げる取り組みが急がれる。(横尾章)

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