竹下真由さん

的場浩司さん

八百啓介さん

村岡安廣さん

ゲスト

 的場 浩司氏(俳優)

パネリスト

 八百 啓介氏(北九州市立大学文学部教授)

 村岡 安廣氏(村岡総本舗社長)

 竹下 真由氏(竹下製菓社長)

 コーディネーター 桑原 昇氏(佐賀新聞社営業局アド・クリエート部長)

 来年3月に開かれる「肥前さが幕末維新博覧会」のプレイベント・リレーシンポジウム第3弾が小城市小城町の「ゆめぷらっと小城」で開かれた。「幕末・維新小城のチカラ」とのテーマで、銘菓「小城羊羹」など和菓子やスイーツを手がかりにゲストに招かれた俳優の的場浩司さんら4人が、未来へ向けた小城の街づくりについて語り合ったパネルディスカッションの要旨を紹介する。

 桑原 小城のまちづくりについて意見をいただきたい。まず小城の印象は?

 的場 小城に来るのは初めて。ここに来る途中、羊羹の看板が多く目についた。甘いものが大好きなので、羊羹が食べられるとわくわくしている。

 竹下 竹下製菓は約40年前に佐賀市から小城市内に移転した。決め手になったのは良質な「水」。私自身、小城の水を飲み「おいしい」と実感している。おいしい水があるいい環境だからこそ、羊羹屋さんや酒蔵が多くあり、人材も集まっている。

 桑原 お菓子を切り口に議論を深めたい。全国のお菓子のトレンドについて的場さんの意見は?

 的場 若い人が求めているのはインスタ映えするスイーツ。SNSに載せてかわいく見えたり、美しく見えたり、おいしく見えたりするものが人気。ただ、僕が思うのは、作る方の愛情がどこまでこもっているのか。ある若い和菓子職人から話を聞くと、伝統としての味をメインで残す一方、和と洋をうまくコラボし、知恵と情熱で新しい和菓子を編み出そうと、明るい方に動いている。

 桑原 製造現場の課題は?

 村岡 革新と保守をどううまく進行させるのかがポイント。海外の食の博覧会では、羊羹をコーヒーと提供し、好評だった。繊細な和菓子をどう生かしていくかが羊羹産業の課題で、感性を高めるトレーニングも継続しなければならない。

 竹下 看板商品の「ブラックモンブラン」は発売して48年目。50年ほど前、祖父がヨーロッパのアルプスを見て、これにチョコレートをかけたらおいしいのでは、との発想で誕生した。祖父は欧州で日本にはないものを感じ、当時としては新しいアイスクリームを作り出した。しかし、48年目にもなると、これだけではだめ。味の伝統は守ると同時に「竹下製菓から何か新しい商品が出るんじゃないの」という客のワクワク感を引き出そうと、新商品作りに励んでいる。

 桑原 お菓子の産地として重要な点は?

 村岡 地元の人に羊羹を食べてもらうには安さが重要。子どものころから羊羹を食べ、その味を覚えて成長してもらう。そのためには安さとおいしさが必要。

 竹下 小さい頃から小城羊羹や丸ぼうろを食べて育ったが、大学で上京すると、佐賀の銘菓が簡単に手に入らなくなった。そうなると、なんだか心が満たされず、慣れ親しんだ郷土の味が恋しくなる。全国にはご当地食がいっぱいある。地域に生きる人にとって心の支えになっている。

 的場 スイーツ好きになった原点は母が焼いてくれたホットケーキ。子どもの時から食べていたので、いまだに懐かしい味で、自分でもホットケーキを作るようになった。幼いころに覚えた味は、大人になっても残る。小城羊羹のように地元の和菓子を子どもたちに与えるのが必要だと思う。

 竹下 東京の羊羹屋さんの商品はおいしいものばかり。でも、小さい頃から慣れ親しんだ小城羊羹の「しゃり感」は捨てがたい。

 的場 竹下さんのように、小城羊羹に親しみを感じる人が多くなれば、地場産業として廃れなくなる。

 桑原 地域の菓子文化の課題など教えてほしい。

 八百 福岡県では鶏卵そうめんなどが消えそうになっている。八幡饅頭は廃業し、再開のめどが立っていない。調査の過程で浮かび上がるのは後継者問題。家業を子どもに継がせていいのかとの葛藤がある。地域の菓子産業を残すには、地元の買い手が食べ続けないと、受け継がれない。

 桑原 子どもたちが菓子作りに接する機会は?

 村岡 小城羊羹には2人のものづくりマイスターがいて、子どもたちに羊羹作り体験などを行っている。

 竹下 昔の子どもたちは菓子の工場(こうば)への出入りはかなり自由で、間近で菓子作りを見ていた。今は食品管理が厳しくなり街のお菓子屋さんでも勝手に入れなくなっている。

 桑原 地域のお菓子の文化を生かし将来のまちづくりをどうしていくか?

 的場 小城は風光明媚で、歴史も詰まっている。さらに盛り上げていくには、子どもたちに小城のお菓子を好きになってもらい、理解してもらう。そしてお菓子のまちになってほしい。いつも、甘い香りがするまちになってほしい。

 八百 小城羊羹は先人たちの苦闘の上に出来上がっている。地域の食文化は歴史的な文化と密接につながっていることを多くの人が語りつないでほしい。

 村岡 小城市に数多く残る史跡を整備する取り組みを始めようとしている。そうした中で、シュガーロードを2年続けて日本遺産登録に向け申請している。

 竹下 佐賀の人は謙虚で「何もない」と言われるが、私は逆に「何でもある」と思う。小城でいえば清水の滝やホタルが乱舞する祇園川などの場所やおいしいものがいっぱい紹介できる自信を持ってほしい。

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