米政府は北朝鮮を「テロ支援国家」として再指定した。米国の「圧力」が一段と強まったことで、ここのところ核・ミサイル実験など挑発行動を控えてきた北朝鮮の反発が予想される。

 米政府は今年2月にマレーシアで金正恩(キムジョンウン)朝鮮労働党委員長の異母兄である金正男(キムジョンナム)氏が殺害された際、猛毒の神経剤が使用されたことを重視、化学兵器を使ったテロ行為であることを考慮した。

 北朝鮮に拘束されていた米国人大学生が昏睡(こんすい)状態に陥り、6月に解放後、死亡したことも判断材料となったもようだ。トランプ大統領は先の訪日で、拉致被害者家族らと面会しており、北朝鮮の人道問題を重視する立場を示していた。

 北朝鮮のこれらの行為は断じて許せない。北朝鮮は国際規範に違反し続けている。だが、今回の再指定は、唐突感が否めない。トランプ大統領は「何年も前に再指定は行われるべきだった」と述べたが、なぜ今なのかという疑問が拭えない。

 米政府は大韓航空機爆破事件の翌年の1988年に北朝鮮をテロ支援国家に指定したが、2008年に解除した。米本土を狙う大陸間弾道ミサイル(ICBM)開発の進展など脅威の深刻化を受け、再指定を求める声が強まっていた。

 しかし、北朝鮮は核・ミサイル実験の実施を9月中旬以降控えている上、中国の習近平国家主席の特使である宋濤・共産党中央対外連絡部長が訪朝し、対話の糸口を模索して20日に帰国したばかりだった。その直後の再指定では中国の外交努力は何のためか、という疑問が浮かぶ。

 ロシアを舞台にした北朝鮮と日本などの外交官の接触も今年秋に行われた。米政府のテロ支援国家指定は、これらの外交活動が効果を上げないと見切りを付けての決定だろうか。米国は既に制裁を拡大し再指定は象徴的な意味合いが強い。外交上の駆け引きとしての再指定だろうか。

 北朝鮮情勢は日本にも重大な影響を与える軍事衝突の可能性があるが、問題は国民が政策の是非を判断する材料が少な過ぎることだ。

 安倍晋三首相は米国の再指定を受けて、「北朝鮮に対する圧力を強化するものとして歓迎し、支持する」と述べた。「あらゆる手段を使って圧力を最大限にし、北朝鮮から対話を求めてくる状況」をつくると言う。

 だが、そのための効果的な方法はどうあるべきだろうか。もし北朝鮮が対話を求めてこなければ、軍事介入に一挙に進むのだろうか。こうした点が明らかになっていない。トランプ大統領との先の首脳会談で北朝鮮問題について具体的にどんな議論がなされたかも説明すべきだ。

 外交・安全保障上の問題だけに情報の公開が難しいのはよく分かる。危機感をあおるべきではないし、楽観的な見方を広めるのも無責任であろう。

 だが、日米両政府はもう少し丁寧な説明をしてほしい。日本の隣国で軍事衝突につながる危機が進むのだから、説明なき圧力強化路線は、国民の支持を得られない。

 次の焦点である来春の米韓合同軍事演習も、米国は北朝鮮が求める「停止」に否定的だ。「圧力」は次々と実現するが、「対話」の方は垣間見えたと思ったら、すぐにつぶれてしまう。粘り強く対話を求める努力が軽んじられている。(共同通信・杉田弘毅)

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