東京都港区が開いた保育所入園説明会。子連れで参加した母親らで満席となった=8日

 認可保育所などの利用申込者と待機児童の推移

 衆院解散時に安倍晋三首相が突如表明した幼児教育・保育無償化政策に、待機児童解消を求める保護者らの反発が広がっている。待機児童ゼロの目標達成時期も3年先送りされたばかり。無償化が呼び水となってさらにニーズが増える可能性もあり、ツイッター上では「保育所整備を優先して」と、希望とのずれに怒りの声が次々寄せられている。【共同】

 ▽狭き門

 8日午後。東京都港区が開いた保育所入園説明会は、用意された180席がすぐに満席になり、母親たちが子どもをあやしながら職員の説明に聞き入っていた。

 「もし来年4月に入れなかったら、仕事を辞めなければならないかも」。昨年11月に長男を出産し、ワインの輸入会社を育児休業中の宮野孝子さん(40)が暗い表情で話した。港区では、年度の途中でも満1歳になった月から入園できる制度がある。だが、枠は各園とも2、3人と狭き門で、抽選に外れた宮野さんは「積み上げてきたキャリアを失いたくない」と焦りを隠さない。

 安倍政権は3~5歳児全てと、所得の低い家庭の0~2歳児を対象に、2019年度から段階的に無償化する方針で、8千億円強の財源が必要となる。一方で、受け皿不足、人手不足は深刻で、用地確保や保育士の処遇改善が課題となっている。「予算は保育士の給与改善に回すべきで、確実に保育所に入れるようにするのが先ではないでしょうか」と宮野さん。

 千葉県船橋市の女性(38)は、2年連続認可保育所に外れ、国や自治体から運営費が支給されない認可外施設に長女(2)を預ける。女性は「娘の施設は、雑居ビルの一室で園庭もない。安全性にも不安がある。こうした施設に通わなければならない状況をまず無くしてほしい」と訴える。

 ▽パフォーマンス

 待機児童解消を求める保護者らのグループ「希望するみんなが保育園に入れる社会をめざす会」代表の天野妙さん(42)は「そもそも衆院選の前に突然、首相が無償化を言い出した。選挙用のパフォーマンスにすぎない」と批判する。

 めざす会は、無償化は低所得者世帯に限り、保育の量と質の充実を求める署名活動を開始。ツイッター上でも「#子育て政策おかしくないですか」という目印を付けて意見募集したところ、「まず入れないと困るから!」「もう去年のようなつらい思いはしたくない。保活に疲れた…」など、政策を疑問視する投稿が相次いでいる。

 ▽高所得ほど恩恵

 保育所整備に追われる自治体も困惑気味だ。4月1日時点の待機児童数が全国2番目だった岡山市の担当者は「今ですら追い付いていないのに、無償化すれば『自分も』という申し込む保護者が増え、負のスパイラルに陥る」と懸念する。

 現在、3~5歳の保育料については第3子以降と生活保護世帯の子などを既に無償化、低所得世帯も負担が軽減されている。全面無償化すると、所得が高い世帯ほど恩恵を受けるとの指摘もある。

 元横浜市副市長で保育行政に詳しい前田正子甲南大教授は「人手不足で地方でも女性の就業意欲が高まっている。まずは全ての子どもが安心して通える保育所整備が先決」と話している。

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