児童がタブレット端末に書いた「マイ黒板」の内容は電子黒板に表示され、クラスみんなで話し合う

デジタル教科書から該当部分を抜きだし、文章を書き込んで「マイ黒板」を完成させる

 武雄市が10月からデジタル教科書の実証研究を進めている。市立の全小中学生に貸与しているタブレット端末を活用し、小学4年と中学1年の国語、算数、数学で試行している。算数の面積や国語の漢字の筆順などでデジタルの特性を生かして理解を助け、電子黒板や紙の教科書も併用する授業を展開している。

 北方小であった4年生の国語の公開授業。新見南吉の『ごんぎつね』を教材に、教諭が「ごんは兵十に何をどうやって届けたか。教科書から抜き出し、その時のごんの気持ちを書いて」と問題を出した。児童はタブレット端末に表示されている“教科書”から、イワシや栗を家に置いた場面の文章を抜き出して同じ画面の「マイ黒板」に貼り付け、「かわいそうに思っている」などと書き込んだ。

◇東洋大が検証

 教諭は一人の児童のマイ黒板の画面を電子黒板に表示してクラスに意見を求めた。別の児童のマイ黒板とデジタル教科書も交互に表示しながら授業を進め、普通の黒板には全体の流れを板書しながら授業をまとめていった。

 デジタル教科書は文科省が2020年度から全国の学校に導入する方針。武雄市はタブレット端末の活用域を広げようと、東洋大、教科書会社2社と共同で、市立の全小中学校16校で研究している。来年3月まで各科目で80~120コマ程度を行い、東洋大が効果や課題を検証する。

 使用しているデジタル教科書には、割り算の数字がコインに変化したり、違う図形を重ねて面積を簡単に比較できるなどさまざまな機能がある。音声読み上げや筆順テスト、動画、イラストなどの多様な“仕掛け”も内包する。タブレット内にある個人の黒板「マイ黒板」は電子黒板でみんなに共有される。紙の教科書との併用が基本で、机上にはタブレット端末、ノート、紙の教科書が並ぶ。

◇工夫欠かせず

 デジタル教科書について東洋大文学部の斎藤里美教授は「紙よりも一覧性や俯瞰(ふかん)性には劣るが、情報量、文字拡大や音声読み上げ、学習履歴の保存、個別学習やフィードバックなど多様な利点がある。指導者の活用力も問われる」と分析。「思考力や表現力がどう育ち、学力にどう反映されるか検証したい」と公開授業後の協議で話した。

 現場の教諭たちは「立体を回転させて上から見たり横から見たりできる」「いろんな色も使えて書き込みも簡単。書き写しなどの時間も短縮できる」といった利点を挙げる。手作りしていた教材がデジタルで用意されているので助かる面もあるという。

 一方、「動画などを見て“分かったつもり”になってしまうケースもある」「いきなりデジタルではなく、積み木などで立体の感覚を体感させることも不可欠」という指摘もある。理解のさせ方には工夫も欠かせない。

 市教委は「まず、子どもたちの関心や使い方など反応をみたい。産学官の連携で、先生のスキルアップを図り、課題や問題点も探っていきたい」としている。

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