〈水圧の泥を飛ばして蓮根(はすね)掘(ほ)る〉田村凉風。「蓮根掘る」は冬の季語で、蓮根(れんこん)の味が濃くなるのも晩秋から冬にかけてである。きのうは「蓮根の日」だった。インド、中国、エジプトと原産地は諸説あり、どこも文明の興ったところなのが興味深い◆日本へは奈良時代に中国から伝わったとされる。ただ、縄文遺跡で蓮の実が見つかり、2千年以上前から既にあったともいわれている。平安時代の法令集「延喜式」には蓮根が出てくるので、その頃より食べられていたようだが、食用として本格的に栽培されだしたのは明治に入ってのことだ◆蓮根といえば穴。「辛子(からし)蓮根」を食べた小説家の角田光代さんは、穴が埋められて初めて、その穴に気づいた。「空(から)であれば気づかないままなのに、空が埋まって空に気づく。なんか哲学的」と随筆に書いている。作家の想像力が刺激されたようだ◆佐賀で一大産地は白石地区である。昔は重労働だった収穫が、今は冒頭の句のように、ホースの水圧を利用し作業は少し楽になった。糸を引くホクホク感が特徴で、正月用のがめ煮(筑前煮)には欠かせない◆鮮度を保つため、泥付きで出荷するJAさが白石地区では今、全国への宅配も受け付けている。縁起ものの蓮根を食し、来る年も見通し明るくといきたいものだ。あっ、まだ気が早すぎたかな。(章)

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