「うたじま」と呼ばれるほど、鹿児島県の奄美(あまみ)は唄遊びが盛んだ。デビュー曲「ワダツミの木」で人々の心を揺り動かした元(はじめ)ちとせさんも、島唄の伝統の中から生まれた。島唄文化が花開いた素地は、土地に根付いた祭りや踊りである◆♪雨たぼーり(雨をくださいませ) 雨たぼーりたーぼーり 島が富(ぷう)どぅ世が富(島が豊かに、世の中が豊かになりますように)…。与論島(よろんじま)に伝わる「十五夜踊り」の一節である。雨乞いと五穀豊穣(ほうじょう)、島の安穏を願うもので、歌は哀調を帯び、人々はゆったりと踊る◆与論は九州本土よりも沖縄にはるかに近く、日本と琉球の文化が融合している。天皇、皇后両陛下がきょうから奄美群島と屋久島を訪問される。与論島では十五夜踊りも鑑賞される運びだ◆「遠隔の地や島々への旅も、私は天皇の象徴的行為として大切なものを感じてきた」。昨夏のビデオメッセージで語られた陛下。奄美は1953(昭和28)年まで米軍統治下に置かれ、その前は薩摩(さつま)藩に支配された時代もあった◆両陛下は、2年前の噴火で一時離島を強いられた口之永良部島(くちのえらぶじま)の住民とも懇談される。戦争で多くの犠牲者が出た沖縄への旅は10回に及ぶが、そこには「周縁」に暮らす人々に寄せる特別の思いがある。陛下のご訪問で国民の目が向く。島への理解を深めるいい機会となろう。(章)

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