有明海の現状や意見などを述べる中村直明運営委員長=13日午後、佐賀市の県有明海漁協南川副支所

意見を述べる斎藤健農相=13日午後、佐賀市の県有明海漁協南川副支所

 漁業者と同じ目線の船上からはノリの色落ち被害の原因となる赤潮が確認された。諫早湾干拓事業(長崎県)の問題で国が開門しない方針を決めて以降、初めてとなる農相の有明海視察。漁業者は堤防閉め切り以降の漁場環境の悪化を訴えたが、農相は基金での解決策を繰り返し、有明海再生に向けての開門調査の思いは届かなかった。開門を命じた確定判決の原告弁護団は協議をしない国の姿勢を非難した。

 「大臣9人にお願いしてきたけど何一つ変わっていない」。視察後に佐賀市川副町で行われた意見交換で、県有明海漁協鹿島市支所の中村直明運営委員長は語気を強めた。昨季はノリの色落ちなどの影響で県西南部の水揚げは県全体の25%しかなく、「今年も不安が先に立つ」と吐露した。

 環境異変の疑念の目は諫早湾の堤防内の調整池に向く。今月3日に820万トン、10月31日にも500万トンが湾内へ排水されたといい、「(大量に)排水されると海水に混ざらず、海況が安定しない」と中村委員長。漁協は1日100万トン以内の小まめな排水を要請していて、徳永重昭組合長も「ノリ漁期に(排水を)慎重にしてもらえず、漁業者の不信感につながっている」と強調した。

 漁協大浦支所(藤津郡太良町)の弥永達郎運営委員長は「諫早湾干拓の完成後、タイラギが取れず、今年も休漁が確実な状況。国は有明海再生事業を行っているが、漁場環境は悪化するばかり」と指摘した。

 斎藤健農相は、大量の排水については「調査する」と明言する一方、開門せず100億円の基金創設による解決を図る考えに変わりがないことを示した。

 開門派で福岡高裁確定判決の原告弁護団は、農相訪問時に協議をしなかった国に抗議の声明を出した。「意見交換を避けたのも、開門を忌み嫌って基金案を無理強いしようとする一連の対応と共通し、極めて遺憾」と批判した。原告の漁業者、平方宣清さん(65)=太良町=は「海を良くするには開門しかないのに、国は開門を求める声を踏みにじって決めている」と憤った。

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