走行会でコース(手前)を外れ、観客に突っ込んだ乗用車=12日午後1時43分、佐賀市富士町の天山スキー場駐車場

 12日午前9時半ごろ、佐賀市富士町の天山スキー場の駐車場で、車のタイヤを滑らせながら走る「ドリフト」の走行会で、乗用車がコースを外れて観客に突っ込んだ。観客の小城市内の男性(45)が脳挫傷などで意識不明の重体、別の男性(23)=佐賀市=があごの骨を折る重傷を負い、乗用車の2人も負傷した。佐賀北署は、業務上過失致傷の疑いもあるとみて、主催した佐賀市の自動車関連会社などから事情を聴いている。

 佐賀北署によると、乗用車を運転していた長崎県西海市の男性(24)が頸(けい)椎(つい)損傷、助手席の男性(36)=同市=は胸を骨折した。

 捜査関係者によると、乗用車はドリフト走行でコーナーを曲がった後、スピードの出し過ぎで制御不能になったとみられる。直線に入ってからコース外側のコンクリート製の花壇(高さ約30センチ)に衝突し、観客側に突っ込んだという。

 走行会は、駐車場に設けた1周400メートルのコースで実施、佐賀県内外から66台が参加し、当時は約100人がいた。主催した佐賀市の自動車関連会社「カーピット森永」の社長ら2人がスタッフを務め、出場者が運営を手伝っていた。

 社長は、花壇から約2メートル離れた場所にコーンを並べ、観客に近いところを走行しないようにしていたと説明する。「車がコースを外れることは想定できなかった」と述べ、「被害者の方の一日も早い回復を祈っている」と話している。

 天山スキー場によると、駐車場はスキーシーズンの冬場以外にサーキット場として貸し出している。安全対策は「主催者側に任せていた」と話し、「ここまで大きな事故は初めて。今後は会社としても安全対策を講じる」と述べている。

安全対策は主催者任せ

 カーブで車のタイヤを滑らせながら高速で走る「ドリフト」を披露する走行会は、迫力のあるモータースポーツ感覚で人気を集める一方、観客への安全対策の公的基準はない。12日に事故が起きた佐賀市の走行会も、対策は主催者の一存で決められていた。

 会場となったスキー場駐車場では観覧席は特に設けられず、観客はコースに近寄って見ることができた。県警交通規制課は「ドリフトは車の機能を超えた危険な運転。公道上なら絶対に許可は出せないが、私有地で行われた場合は規制が入る余地がない」と話す。

 昨年11月には宇都宮市のサーキットでコース脇にいたチームスタッフの女性が外れた車の車輪に当たり死亡するなど、コース外にいる人を巻き込む事故は過去にも起きている。

 2013年からドリフト競技を公認する日本自動車連盟(JAF)は独自の規定で、コースと観客との間にガードレールなど防護施設を設けるよう義務化。オフシーズンにスキー場駐車場を使い競技を開催する滋賀県米原市の「奥伊吹モーターパーク」はコンクリートブロックでコースを囲い、JAFの公認を得た。

 JAFの担当者は「ドリフト競技を含め、全てのモータースポーツは危険ということを前提にコースをつくることが不可欠だ」と訴える。

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