加計学園の獣医学部新設を巡り、文部科学省の大学設置・学校法人審議会は認可するよう林芳正文科相に答申した。近く認可される。国家戦略特区制度による52年ぶりの獣医学部新設となり、来年4月には愛媛県今治市に新キャンパスが開設される見通しだ。現地では、獣医学部棟や獣医学教育病院棟などの建設が着々と進められている。

 しかし安倍晋三首相の長年の友人が理事長を務める加計学園が今年1月に、国家戦略特区諮問会議で特区の事業者に選定されるまでの過程で、首相の側近や内閣府が文科省に圧力をかけたとされるなど、数々の疑惑が今なおくすぶる。「一点の曇りもない」という政府の説明に8割近い国民は納得できないでいる。

 早期開学に向け、首相側近が当時の文科次官に働きかけたり、「総理のご意向」を盾に内閣府が文科省に対応を迫ったりしたとされる経緯については当事者間の言い分がかみ合わず、新たな証言や文書でも出てこない限り、解明を進めるのは難しいだろう。だが、やるべきことはまだある。

 加計学園の計画が、2年前に閣議決定された獣医学部新設の4条件を満たしているかを国会で徹底検証することだ。設置審の審査過程もチェックする必要がある。森友問題もあり、行政の公平公正が大きく揺らいでいる。なし崩し的に決着させることなど許されない。

 獣医師が過剰にならないよう長年認められてこなかった獣医学部の新設に向け政府は2015年6月、4条件を閣議決定した。「獣医師の需要動向を考慮」「既存の大学では対応が困難」などだが、諮問会議の議事要旨など公表資料からは、加計学園の計画が条件を満たすかを詳細に議論した形跡がうかがえない。

 特区担当だった前地方創生担当相は「最終的に私が確認した」と答弁した。だが根拠を聞かれても「経済学的に言えば、つくればつくるほどいい」「具体的な需要を完璧に描ける人はいない」と持論を展開。何一つ、まともに答えなかった。

 諮問会議は加計学園を事業者に決め、今年4月に文科相から認可を諮問された設置審が審査。翌月になり、160人という全国の獣医師を養成する学部の中で最大規模となる入学定員を巡り「社会的な人材需要の動向が不明」「実習を円滑に実施できるか不明」と指摘したほか、高齢の教員が多いなどとし、見直しを促す審査意見を出した。

 学園側は計画を修正したが、設置審は8月に解剖学など多岐にわたる実習計画に多くの課題があると、当初予定していた最終判断を保留した。

 定員を140人にしたり、実習計画を変更したりといった学園側の修正を経て、答申に至った。答申には「留意事項」があり、定員の厳格な管理や実習の質的・量的拡充を求めている。

 今回、文科省が審査意見や学園側の対応を公開したことで設置審の審査過程は、ある程度までたどることができる。もちろん、学園側が設置審に説明した通りの改善がきちんと成されたかをチェックする必要はある。

 だが諮問会議による業者選定過程のほとんどは、やぶの中だ。全国的に過剰気味といわれる獣医師に対する需要などについて、諮問会議で十分な議論があったかも疑わしい。首相が強調してきた「丁寧な説明」なしに国民の不信は拭えまい。(堤秀司)

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