九州電力の玄海原発(手前)=10日午後、東松浦郡玄海町(共同通信社ヘリから)

 九州電力玄海原発(東松浦郡玄海町)の再稼働を巡る地元同意に関し、佐賀県や福岡、長崎両県の周辺自治体から対象範囲の拡大を求める強い声が上がった。「事故で受ける影響は立地自治体と変わらない」。ひとたび事故が起きれば甚大な被害に巻き込まれるリスクを抱える首長らの不満が浮き彫りになった。【共同】

 玄海原発から最短数百メートルに位置する唐津市の坂井俊之市長は「地元の範囲がどこまでかを決める立場にないが、唐津市は含まれるべきだ」と主張する。原発5キロ圏の人口比較では玄海町を上回る約4500人で、佐賀県や玄海町と同様の扱いが当然との立場だ。

 30キロ圏内に全域が入る長崎県松浦市や大部分が含まれる伊万里市も、事故時の影響などが立地自治体と変わらないとの理由を挙げ、対象範囲の拡大を主張した。

 ほかでも「防災対策を実施する30キロ圏の市町と県が対象」(佐賀市)「国際基準をベースに国が示した30キロ圏が一つの線引き」(武雄市)「避難先はすべて入れるべきだ」(嬉野市)と首長によって対象は異なるものの、範囲を広げるべきだとの声が目立つ。

 再稼働に関しても周辺自治体からは「事故が発生すれば取り返しのつかないことになる」(伊万里市)と厳しい姿勢だ。容認派首長からも「広域避難計画が不十分」(小城市)など、事故時の対応を不安視する受け止めが出ている。

《解説》同意の対象変わらぬ恐れ

 九州電力玄海原発の立地や周辺の自治体を対象にしたアンケートで、6割に当たる17自治体が「地元同意」の対象範囲の拡大を求めていることが判明した。東京電力福島第1原発事故後も地元同意が立地自治体に限定される状況は変わっておらず、周辺自治体には不満が強い。ただ政府などのこれまでの議論は低調で、現状のまま推移する恐れもある。

 地元同意に法的な位置付けはない。昨年から今年にかけて再稼働した3原発はいずれも、同意対象は立地する県と市町だけだった。対象が広がれば再稼働のハードルが上がることを懸念し、政府は見直しに及び腰だ。

 立地自治体の判断が尊重される今の仕組みでは、近接する周辺自治体の声は反映しにくい。曖昧なまま政府が自治体に難しい判断の丸投げを続ければ、自治体同士のあつれきすら生じかねない。

 アンケートでは、再稼働の是非で首長の意見が分かれるなど立場の隔たりは大きい。原発を主要なエネルギー源の一つとして位置付ける政府には、丁寧に議論を積み上げる姿勢が求められる。

《識者談話》不安解消の仕組み必要

 首藤重幸早稲田大法学学術院教授(原子力行政法)の話 国や九州電力は玄海原発の再稼働に慎重な首長が周辺に存在する重みを感じ、疑問に答える責任がある。電力会社と周辺自治体が結んでいる安全協定を、被害が広範囲に及んだ東京電力福島第1原発事故の経験を踏まえて立地自治体と同水準の内容に強めるなど、不安を解消する仕組みが必要ではないか。九電との安全協定は「行政契約」であり、行政側が真剣に再稼働阻止を考えるなら、その解釈次第で九電に強い態度で臨むこともできるはずだ。首長の本気度も試されている。

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