ヘルパーから入浴の介助を受ける宿泊客=嬉野市の椎葉山荘

介助サービスを利用した宿泊客と談笑するデイサービスおがわちの川野美佐子さん(左から2人目)と吉川博光・佐賀嬉野バリアフリーツアーセンター事務局長(左)=嬉野市の椎葉山荘

 「美肌の湯」として知られる嬉野温泉(嬉野市)がシニア層から人気を集めている。旅行予約サイトの楽天トラベルが9月に発表した「シニアに人気の温泉地ランキング」で、2年連続1位を獲得。体が不自由な高齢者でも安心して温泉を楽しめる入浴介助サービスが好評で、嬉野の取り組みに学び、他の温泉地でもサービスが広がり始めている。

 嬉野市内の旅館の客室でデイサービスおがわち(同市)のヘルパー川野美佐子さん(63)が、入浴を控えた山口みさ子さん(93)=長崎市=の血圧を測りながら優しく語り掛ける。「夕食はおいしかったですか」「紅葉の時はもっときれいですよ」。会話を続けるうちに、山口さんの血圧は入浴に適した数値に下がっていった。

 歩行につえが必要な山口さんはここ数年、転倒などへの不安から大好きな温泉に行く機会がめっきり減った。自宅とは勝手が違う温泉宿での介助は負担が重く、家族も旅行に二の足を踏んでいたという。

 ■気兼ねなく

 そんな時、嬉野市の任意団体「佐賀嬉野バリアフリーツアーセンター(BFTC)」が取り組む入浴介助サービスを知った。孫の永田由希さん(45)は満足げな山口さんを見て、「私たちに気兼ねなく楽しめているよう。また来んばね」とほほ笑んだ。

 介助サービスは、旅行者からの相談をきっかけに2013年度からスタート。BFTCが窓口となり、提携する介護事業所3施設のヘルパーを市内の温浴施設や温泉宿に派遣している。導入に向けて約130人のモニター客を受け入れて課題を洗い出し、受付時には利用者の体の状態や必要な介助を確認。ヘルパーに事前に伝える体制も整えた。

 サービス利用料は1回5千円。利用客は年々増え、16年度は43人を介助した。「親と最後の旅行を」といった家族からの申し込みが多く、ヘルパーを指定するリピーター客もいるという。

 ■宿泊数1.7倍

 施設のバリアフリー化も進め、8月までの1年間で楽天のシニアプランを利用した60歳以上の宿泊数は前年比66.8%増。介助利用客は大人数の家族連れも目立ち、客単価が上がる効果もある。吉川博光BFTC事務局長は「ヘルパーによる行き届いたサービスに感動する客も多い」とし、高齢化の進行で今後さらに需要が伸びるとみる。

 地域一帯となった入浴介助サービスは全国でも珍しく、嬉野の取り組みを参考に事業化を目指す温泉地も出てきている。鹿児島県指宿市は9月から、モニター客を対象に日帰りの砂蒸し温泉施設で介助サービスを試験導入。来年1月にもサービスを始める。

 事業主体のeワーカーズ鹿児島の紙屋久美子理事長(49)は「宿泊施設にもサービスを広げるためには事業者と介助者の協力が不可欠。嬉野にはその体制があり、まさに先進地」と評価。「体が不自由だからと旅行をあきらめている人たちに少しずつ応えていけたら」と話す。

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