アジア歴訪中のトランプ米大統領は中国の北京で習近平国家主席と会談した。トランプ氏は北朝鮮への圧力強化を訴え、習氏は国連安全保障理事会の対北朝鮮制裁を順守するとともに「対話による解決を探ることが重要だ」と応じた。

 北朝鮮の核・ミサイル開発を阻止するには米中二大国の協調が不可欠であり、北朝鮮に明確なシグナルを送るという意味で両首脳が北京で会談した意義は大きい。

 ただ、具体的な解決の道筋はなお見通せない。米中両国は日本や韓国、ロシアと緊密に連携し、武力ではなく、冷静で柔軟な対話を通じた問題解決を図るべきだ。

 トランプ氏の訪中は就任後初めて。習氏との直接会談は3回目となる。

 トランプ氏にとって、アジア歴訪の主要な目的は、北朝鮮への圧力強化を日中韓首脳に働き掛けることだった。総仕上げの会談で、習氏から米国との「意思疎通と連携を強化したい」との言葉を引き出したのは成果と言えよう。

 一方、2期目をスタートさせた習氏は、今後5年間の任期中、超大国米国との良好な関係を維持するため、トランプ氏との信頼関係を築くことに重点を置いた。北朝鮮問題で協調をアピール、国賓を上回る待遇と米中間の巨額の商談合意でトランプ氏を満足させ、中国側の思惑もほぼ達成できたようだ。

 ただ、北朝鮮への対応を巡り、強硬なトランプ氏と対話重視の習氏のスタンスは異なる。

 トランプ氏は安倍晋三首相、韓国の文在寅大統領と会談し、北朝鮮に対して「最大限の圧力」をかける方針を確認。韓国国会での演説では「われわれを甘く見るな」と北朝鮮に強く警告した。

 北朝鮮と国境を接する中国は武力紛争を望まず、一貫して対話解決を呼び掛けてきた。トランプ氏も「核開発を放棄するなら話し合う用意がある」と北朝鮮に譲歩の余地を残した。かつて中国は北朝鮮の核問題を巡り、同国と日米韓中ロの6カ国協議の仲介役を務めた。中国には北朝鮮に対話の席に着くよう促す前向きな役割を期待したい。

 習氏は先の共産党大会の活動報告で「平和発展の道を堅持し、人類の運命共同体構築を推進する」との外交基本方針を示し、大国、周辺諸国、発展途上国との外交を三つの柱に挙げた。

 「中国の特色ある大国外交」(王毅外相)の中で最も重要なのは米国との関係づくり。両首脳が両国関係の重要性を確認したのは成果だ。もう一つの懸案だった米中間の貿易不均衡問題についても、トランプ氏は「中国と共同で具体的な対策を取る」と述べた。

 しかし、米中間には、中国の強引な海洋進出、人権問題、温室効果ガスの二大排出国としての温暖化対策など多数の対立点があり、今後も是々非々の対話を続けていくことになろう。

 米国のオバマ前政権は地球温暖化対策の新枠組み「パリ協定」への参加を決めていたが、トランプ氏は自国に不利だと離脱を表明。グローバルな問題での米中協調としてパリ協定を早々に批准していた中国ははしごをはずされた。中国は温暖化対策に自ら真剣に取り組むだけでなく、トランプ政権に対し、一国主義に走らず、世界全体の利益を考慮して共同歩調を取るように強く働き掛けていくべきだ。(共同通信・森保裕)

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