これはちょっとしたミステリーというべきだろうか。佐賀県内には生息していないとされてきたニホンジカを、伊万里市の山中で監視カメラがとらえた。映っているのは2頭の成獣のオスだけ。関係者は「なんで?」と首をかしげる◆環境省の資料でも佐賀はシカの空白地域で、調査の対象外だった。農作物被害がない全国6県のうちの一つである。福岡、長崎にはいるが、佐賀県境側には少ない。しかも、自然界では珍しく成獣のオスだけが2頭で行動している◆なぜ伊万里にいるのか、県もまだ突き止めてはいないが、「考えられるのは、飼育されていたものが置き去りにされたか、隣県から移動してきたか」。疑問符はつくばかり。佐賀市の東名(ひがしみょう)遺跡(縄文時代)の貝塚からはニホンジカとカモシカの骨が出ており、大昔はいたことは分かっている◆今は被害はないが、他県ではイノシシよりひどい。シカは食欲旺盛なのだ。伊万里市は猟友会とともに、捕獲の準備段階に入ったものの、動物愛護との狭間(はざま)で悩ましそう。監視を続けながら経過をみるという◆シカは弥生時代の銅鐸(どうたく)にも描かれるなど、日本人とのかかわりは深く、奈良の春日大社のシカは「神鹿(しんろく)」と呼んで大切にされている。人と共存できれば一番いいのだが、被害が出る前の一手が肝要とも…。さあ、どうしたものか。(章)

このエントリーをはてなブックマークに追加