物産展示販売場やレストラン、イベントホールを備えた唐津市ふるさと会館「アルピノ」。右奥がJR唐津駅

 唐津市と玄海町が所有する観光施設の運営をめぐって指定管理者制度が揺れている。これまでは武雄市立図書館をはじめ公共性が高い施設の民間運営の是非が議論されてきたが、今回は行政の選定責任が問われる事態となっている。

 事の発端は玄海町の「玄海海上温泉パレア」の指定管理者で、観光・飲食事業を展開する会社が9月、資金繰りの悪化を理由に撤退を申し出たことだった。この会社を含む3社共同事業体はJR唐津駅横の複合観光施設「アルピノ」の指定管理者でもあり、唐津市が指定を取り消し、閉鎖。秋の観光シーズンを前に波紋が広がった。

 会社は負債約1億5千万円を抱えて破産し、電気、水道代や納入業者への未払い金はパレアが1500万円、アルピノは共同事業体全体で2千万円以上になりそう。

 加えて共同事業体の代表が東京のウェブサービス会社で、2年前のアルピノ管理者選定の際、収支計画の信頼性や地元企業育成の観点から議会で論議を呼んだ経緯がある。このため企業自身の責任とともに、当時の行政の判断と委託後の監督責任が問われている。

 指定管理者制度は地方自治法の改正で2003年に導入され、地方公共団体や外郭団体に限定していた公の施設の管理、運営を民間企業やNPO法人にも広げた。運営面で民間のノウハウが活用でき、競争原理が働くことで経費削減や利用者サービス向上が期待できるというのが理由である。

 民間企業にとっては初期投資が少なく、新たなビジネスチャンスとなり、事業参入の動きが広がった。アルピノについても3社共同事業体が市に支払う使用料で競合業者の3倍の額を提示したことが選定の大きな理由になった。

 ただ当時、代表企業以外の債務状況は審査していなかった。収支計画にしてもあくまで将来予測のシミュレーションである。経営に不測の事態はつきものだ。だからこそ委託後の評価が重要になる。

 各自治体は評価制度を設け、唐津市も指定管理者からの事業報告書などをもとに業務の履行状況、サービスの質、継続性・安定性について評価を行うとしている。

 それで十分だったか。公的施設であることを信用保証として商品を納入してきた業者はもちろん、当面の運営費として約3300万円の公金を投入することに、市民の不信は残ったままだ。

 市は唐津くんちの前に施設を再開することを最優先してきた。12月以降の営業、経営圧迫要因となっている3階飲食フロア、さらにはアルピノそのものをどうするか、本質論議はこれからである。

 財政難と人口縮減時代を迎え、公共施設の再編とともに、民間委託の流れは加速しそうだが、安易な外部委託は住民サービスの低下や事業の遅滞を招く。検証すべき課題は多い。(吉木正彦)

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