安倍晋三首相は初めて来日したトランプ米大統領と会談し、北朝鮮への圧力を最大限まで高める方針で一致した。首相は記者会見で「日米は100パーセント共にある」と強調し、日本の独自制裁を拡大すると表明。大統領は北朝鮮の態度変化を待つ「戦略的忍耐は終わった」と述べた。

 日米同盟の緊密さを強調し、北朝鮮に政策転換を迫る方針と言えよう。

 だが圧力路線だけで事態は打開できるのか。北朝鮮問題の解決とは、核・ミサイル開発をやめさせ、朝鮮半島の非核化を実現することだろう。そのためには中国やロシアを関与させた国際的な対話の場の構築を目指すべきであり、朝鮮半島での軍事的行動や不測の衝突を回避するあらゆる努力を尽くさなければならない。外交的解決に向けた戦略を共有し、対処すべきだ。

 圧力路線に懸念が拭えないのは、それが軍事力を背景にしたものであるためだ。首相は軍事力行使を含む「全ての選択肢」がテーブルの上にあるとする大統領を一貫して支持すると強調した。

 だが大統領の言動には危うさがつきまとう。一つは日本への軍事力強化の要求だ。大統領は来日前、日本上空を通過した弾道ミサイルを日本が迎撃すべきだったとの考えを示したという。記者会見でも日本がミサイルを迎撃できるよう、米国から防衛装備品を大量に購入すべきだと述べた。日本の立場を考慮しない強引な発言と言うしかない。

 もう一つは、米国内で軍事力行使に向けた準備が進んでいるようにみえることだ。米国防総省は北朝鮮の核兵器の完全な掌握には米軍地上部隊の侵攻が必要との見解を表明した。軍事的なシミュレーションは常に必要としても、北朝鮮の挑発行為を誘発する可能性も考慮しなければなるまい。

 両首脳は会談で、北朝鮮問題で果たす中国の役割の重要性を確認した。その一方で「自由で開かれたインド太平洋戦略」の実現に向けた協力強化も確認した。これは海洋進出を進める中国に対抗する構想であり、総合的な対中戦略を構築できているのか疑問が浮かぶ。

 大統領は北朝鮮による拉致被害者や家族と面会し、被害者の帰国に向けて全力を尽くすと表明した。被害者の安全を考えれば軍事的選択があり得ないのは明らかだろう。

 首脳会談では、日米の貿易問題も焦点となった。大統領は2国間協定である日米間の自由貿易協定(FTA)は明言しなかったものの、対日貿易赤字削減に強い意欲を示し、一段の市場開放を求めた。牛肉や自動車といった分野が念頭にあるのは間違いない。

 米国抜きの11カ国で環太平洋連携協定(TPP)に合意した上で、米国にTPP復帰を促すことが日本の通商戦略の基本だ。このシナリオを維持することが対応の柱になろう。

 トランプ米政権の通商問題への取り組みは、2国間での協議を活用することに特徴がある。公平・公正な仕組みよりも力関係を背景に自国に有利な条件を突き付ける姿勢が鮮明で、国際社会からの批判は強まっている。

 多国間での取り決めによる貿易制度を安定させる方が長期的には米経済の安定に資するということを、米国に粘り強く説明していくことが重要になる。そのためにも11カ国のTPP合意を確実にしなければならない。(共同通信・川上高志、高山一郎)

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