旧唐津街道沿いに鎮座する恵比須さま=唐津市大石町

 大きなタイを小脇に抱え、釣竿を肩に、にっこりほほ笑む恵比須(えびす)さま。大漁成就、商売繁盛などをつかさどる神として全国の漁業、商業をはじめ、多くの人々の素朴ながらも厚い信仰を集めている。
 恵比須像はその数の多さでは佐賀市が有名だが、唐津市街地でも曳山(やま)を守る町の要所に祭られている。例えば天保10(1839)年に建立された大石町の恵比須像は平戸、呼子、浜崎、佐賀、長崎に通じる街道が交差する場所に祭られ、漁民や農民が持ち寄った産品で朝市が立ち、大いににぎわったという。
 ところで恵比須さまは鳴り物好きだということをご存じだろうか。全国3000社を超える恵比須社の総本山は島根県松江市にある美保神社である。神社近くの遥拝所から約4キロ沖合に浮かぶ「沖の御前」にその伝説は残る。
 大国主命(大黒天)が出雲国を高天原に譲ることの相談にこの地を訪れた際、子神の事代(ことしろ)主命(ぬしのみこと)(恵比須さま)が「沖の御前」で釣りをしていた。漁師が船で近くを通ると、神楽のような音が聞こえるという。それゆえ「恵比須さまは鳴り物がお好き」と、美保神社には全国から楽器が奉納されている。
 鳴り物と言えば、唐津には全国に誇れる曳山(やま)囃子(ばやし)がある。ならば恵比須さまは唐津の町もお好きなはずだ。ご利益にあやかるため恵比須像巡りをしてみよう。スタートはJR唐津駅前。恵比須像を探しながら曳山巡行コースを巡り、最後は唐津信用金庫本店そばの大黒神を詣でる。そこから高島の宝当神社に渡るもよし。これは新たな観光ルートの発掘でもある。

 たなか・まこと フリーの編集者で、民俗学、歴史を中心に編集・執筆活動を行う。1954年生まれ。唐津市桜馬場。

このエントリーをはてなブックマークに追加