展示場で本番を待つ曳山。湿度を保つための定期的な散水で、曳山前の砂利がぬれている=唐津市西城内

■くんちの人気を日常に

 50万人以上の人出でにぎわう唐津くんち。まちなかのホテルは半年以上前の3月から予約を受け付けるが、開始直後に満室になる。「通常、キャンセル待ちは受け付けていないが、そうでもしないと対応できない」とフロント係。開幕直前でも20件以上のキャンセル待ちがあるという。

最適と言い難い

 県内一の観光地唐津。ホテルの稼働率をはじめ、経済効果を考えると「にぎわいがほかの日にも広がれば」と願う人は多い。くんち人気を日常の観光に生かすためには、14台の曳山(やま)を常時見学できる曳山(ひきやま)展示場が鍵を握る。唐津城に次ぐ人気スポットで、ユネスコ無形文化遺産登録以降、入場者数は増加している。

 ただ築47年、手狭で大型バス2、3台が同時に入ると見学スペースは窮屈で、売店のバックヤードもない。雨漏りなど老朽化が進み、観光客の受け入れに加え、文化財保護の面でも課題がある。今年9月の市議会では、担当部長が「曳山の保存状態が最適とは言い難い状況」と問題点を認めている。

 漆の専門家で、唐津曳山保存検討審議会副会長の林曉・富山大学芸術文化学部教授(63)は「唐津の曳山は中が紙の貼り合わせで、湿度が高いと変形する」と保存上の課題を指摘し、「過度に気を使わなくてもいいが、温湿度を一定に保つことが必要」と語る。温度は15~25度、湿度は50~60%が適度という。

 温湿度は自動計測装置のほか、1日4回、職員が目で確認し、注意を払う。定時に展示スペース下の砂利に散水する自動装置があるが、基準湿度を下回ると、手動に切り替えて散水する。また温度上昇を防ぐため、曳山の背面の鉄扉に遮熱効果のある塗料を塗るなど改善を重ねてきた。

リアルさを体験

 そうした対応にも限界がある。隣接する市民会館は建て替え論議が始まり、早晩、曳山展示場も俎上そじょう(そじょう)に載ってくる。一緒にユネスコ無形文化遺産に登録された祭りの中には、展示する曳山を毎年入れ替え、公開を制限している施設もある。ただ実物14台を総覧できる施設であってこそ、来場者の満足度は高まる。

 市文化振興課の草場誠司係長(47)は「建て替えるなら実物を展示するだけでなく、最新技術で実際のくんちをよりリアルに体験できるような仕掛けも考えていかないと」と話す。当座の策として、市は今回、展示場内に120インチの大型スクリーンを導入する。

 伝統継承と観光活用の両立。「世界の祭り」となった今年、200年の曳山の歴史の上に新たな一歩を踏み出す。=おわり

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