タブレット端末の中で、くんちへの思いを語るキーネンさん=唐津市南城内

パンフレットで曳山の巡行ルートを確認する笹津万祐子さん(左)、山中泰貴さん(中央)、一宅翔太さん=唐津市西城内

■「おもてなし」の試金石

 8月下旬、2番曳山(やま)「青獅子」曳(ひき)子志願者の面接会場。中町の曳山幹部らの前に、スマートフォンが差し出された。「日本にしかない文化に感動しました。参加できるなら精いっぱいやります」。画面越しに、アメリカ人男性が流ちょうな日本語で曳山に寄せる思いを語った。

▼米から曳き子に

 男性はキーネン・アルペイさん(35)。サンフランシスコでゲーム会社に勤める。中町の曳き子である河内野信恒さん(56)の長女と結婚し、2015年、唐津くんちを初めて見た。200年前に作られたとは思えない美しさ。14カ町で異なる曳き子の装束と軽快な囃子(はやし)。一目で魅了された。

 参加が認められ、くんち本番、青獅子の綱を持つ。身長192センチのキーネンさん。河内野さんの自宅では、特注した特大サイズの肉襦袢(じゅばん)が袖を通されるのを待つ。

 外国人の曳き子はまれだが、外国人見物客は増加傾向にある。明確な統計はないが、くんち期間中、外国人向けの案内を引き受ける唐津ボランティアガイド会長の田中丸昌子さん(62)は「外国人は年々増えてる」と言い、ユネスコ無形文化遺産登録の影響で「今年はもっと増えるはず」。受け入れ準備を進めるが、人手不足など課題もある。

▼コト消費追い風 唐津観光協会は今年、帰国子女など外国語ができる生徒が在籍する早稲田佐賀高校に協力を要請。英語、フランス語、中国語が得意な生徒9人が手を挙げた。

 2年の一宅(いちたく)翔太さん(17)もその1人。母が中国人で、中国語と上海の方言が話せる。本番に向け、近くの飲食店や曳山の場所、バス停の位置などを頭に入れる。福岡から通学し、くんちを見るのは初めて。「不安もあるけど、自分ができることで地域に貢献したい」。心強い助っ人たちだ。

 訪日外国人旅行者は年々増え、今年9月の段階で昨年より1カ月以上早く2000万人を突破。その目的も、以前の買い物中心から着物や茶道などの伝統文化、城下町の風情といった日本ならでの体験を求める“コト消費”に変わってきた。

 唐津市の2015年の外国人延べ宿泊者数は2万3400人。オリンピックイヤーの2020年には3万人を目指す。唐津くんちを代表に、コト消費の資源を数多く備える唐津がインバウンド振興の大きな波に乗れるか。ユネスコ無形文化遺産登録元年の今年、「おもてなし」の試金石となる。

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