インターネットの向こう側には、深い闇がある。もう20年ほど前になるが、「ドクター・キリコの診察室」と名付けたインターネット掲示板があった。キリコは、手塚治虫の名作漫画『ブラック・ジャック』に登場する、患者に安楽死を与える医師の名前である◆いわゆる自殺サイトで、27歳の塾講師の男が運営していた。自殺願望のある人たちに薬物の量や使い方を教え、青酸カリのカプセルを売った。このカプセルで女性2人が亡くなり、男も自殺する。この事件などを扱ったジャーナリスト一橋文哉さんは著書『人間の闇』で「ネット殺人には自殺幇助ほうじょ型と殺人請負型がある」と指摘する◆神奈川県座間市のアパートから、男女9人の切断遺体が見つかった。「自殺を一緒にしてくれる人を探している」とツイッターに書き込んだ女性が含まれ、逮捕された男とは自殺サイトで知り合ったらしい◆いったい何が起きたのか。最近は「ダーク・ウェブ」と呼ばれる闇サイトの存在が注目されている。通常の検索サイトにはひっかからず、匿名性が守られ、仮想通貨でやりとりするのだという◆「現代は何でも茶の間に居ながらにして、ネットで済ますケースが増えているが、ついに殺人までネットで依頼する時代が到来したのである」と一橋さん。私たちの社会に巣食うネットの闇に戦慄する。(史)

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