また不祥事が発覚した。SUBARU(スバル)が日産自動車と同じ検査不正を続けていた。データ改ざんが明らかになった神戸製鋼所でも新たに日本工業規格(JIS)違反が分かった。日本企業のつまずきは底なし沼の様相だ。

 残念だがこれでとどまる保証はない。同じような不正などがないか現在、点検を進めている企業も多いはずだ。

 高品質を世界に誇った「メード・イン・ジャパン」の信じられない内実を、これでもかと、目の前に突き付けられるのはつらい。しかし長年顧みられることなく現場に染みついてしまった悪弊はこの際、全て明るみに出して、取り除かなくてはならない。

 これまで明らかになった問題で各社に共通するのは、経営と現場の乖離(かいり)だ。経営には、競争力のある製品をいち早く市場に投入したり、顧客の要望に応えたりする責任がある。それを果たすためには、それ相応の技能、マンパワー、設備が現場に整っていなければならない。

 現場の実情を把握するための経営の努力は十分だったのか。各社はここに齟齬(そご)をきたしたまま、漫然と操業を続けてきたのではないか。顧客が満足し業績も安定していれば、経営方針や現場の状況を厳しく点検する必要性は薄れてくる。

 しかし双方がコミュニケーションを欠いたまま、この状態が続けば、いずれどこかで無理が生じ、ひずみが出てくるのは避けられない。ひずみの形はさまざまだ。今回は、検査プロセスでの手抜きであったり、品質データの改ざんであったりした。

 広告大手電通であった新入社員の過労自殺も、ひずみが極めて不幸な形で噴出した事例だろう。東芝を破綻寸前まで追い込んだ不正会計・巨額損失問題、製造業としては戦後最大の破綻となったタカタの欠陥エアバッグのリコール(無料の回収・修理)も、経営と現場が全く違う方向を向いていたことが傷口を広げた。

 直近の決算で数字を整えることに血道を上げている間に、企業の存在意義や本来の目的を見失ってしまった。今回、不正が明らかになった企業の経営陣は、失ったものの大きさにがくぜんとしているはずだ。経営陣ばかりではない。株主も、企業を短期的な利益追求に追いやると、それ以外の価値に目を向ける余裕を失い、結局は企業価値が毀損(きそん)してしまうことに改めて留意してほしい。

 まだ原因究明は緒に就いたばかりだが、人手不足や、検査に必要な時間や手間などの実情を把握できていない経営が、現場に過大な要求を下ろしてきた構図が浮かび上がってきた。

 経営は人員増も含め、現場の負担を軽減するための投資を惜しむべきではない。省力化のために最新デジタル技術の導入なども検討する価値がある。コスト削減は経営の課題だがそれは安全最優先のために、製造過程を法令に合致するように最適化した後の話だ。

 その上で、政府には最終検査に見直しの余地があるか見極めてほしい。現在の制度は終戦直後に制定された道路運送車両法で定められた。状況は大きく変わっている。安全確保を確実にしながら現在の工程技術向上を反映した合理的な在り方があり得るのか。専門家も交え検討すべき時期にきているのではないか。(共同通信・高山一郎)

このエントリーをはてなブックマークに追加