17世紀後半の上級品(柿右衛門窯跡)と下級品(広瀬向窯跡)

 目に映る木々はまだ青さが目立つが、朝夕の冷え込みにはぐっと秋らしさが感じられるようになった。世間では、スポーツの秋やら食欲の秋やらさまざまな「秋」でにぎわう季節だが、職場の有田町出土文化財管理センターでは、まさに出土陶片の秋。エアコンのない収蔵庫は夏は蒸し風呂のような暑さで、とても長時間こもってじっくりと陶片を観察するどころではない。ようやく気候も穏やかになり、各種の調査に訪れる方々もぐっと増える季節である。

 日常的に、何気なく陶片に囲まれて過ごしていると、ふと気付くことも珍しくない。たとえば、地域や個々の窯場の個性がより鮮明に反映される製品、いわば生産窯の識別が容易なのは、上級品はともかく、これに続くのは中級品クラスではなく、意外にも下級品なのである。なぜか? 上級品は、細部までこだわりを持って地域や窯場なりの技術や感性が盛り込まれる。つまり、可能な限りどんどん個性的な要素をプラスしたもの、それが上級品である。一方、逆に下級品はマイナスを志向する製品。利潤との折り合い上どんどん要素を切り捨てるため、結果として、地域や窯場としてのコアな個性があらわになるのである。

 有田焼は、19世紀以降おおむね下級品を切り捨てたことにより、現在では、こうした原理が見えにくい構造になっている。個性的な製品を開発する上で、ちょっと頭の片隅にでも置いていただけたらと思う。 

このエントリーをはてなブックマークに追加