リーダーの器とは何か。孔子の孫に当たる儒学者の子思(しし)が、ある人物について王に進言した。「あの男は将軍にする器量がございます」「分かっている。だが、役人だった時、人民から1人ふたつずつ鶏卵を出させて食ったことがある。だから用いないのだ」◆汚職を嫌う王に対して子思は、腕の良い大工を引き合いに、こう諫(いさ)めた。「木のいいところを取って、悪いところを捨てるのです。腐ったところがあっても、それはごくわずか」と。清廉さか、能力優先か―。現代の感覚では、私腹を肥やすような人物は不適格だろう◆中国では「反腐敗」を掲げる習近平氏が、官僚や政治家を次々に摘発している。「トラもハエも一緒にたたく」姿勢は、国民から圧倒的な支持を得ているようだ。中国共産党大会では自らの名前を冠した思想を党の規約に盛り込み、毛沢東や〓(登の右に郊のツクリ)小平に並ぶ偉大な指導者と位置付けてみせた◆着々と個人崇拝を進める一方、習氏はこれまでの慣例を破って、新たな指導部「チャイナ・セブン」に、後継者と目される次の世代の人材を入れなかった。さらなる長期政権へ布石とみられる◆冒頭のエピソードが載る『孔叢子(くぞうし)』には、後世に作られた「偽書」説がある。汚職撲滅の看板の陰で、ライバルを蹴落とす権力闘争もささやかれる習氏への批判の書とも読めそうだが…。(史)

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