商工中金は不正融資問題で2度目の業務改善命令を受け、安達健祐社長ら代表取締役が引責辞任することになった。経営が苦しい中小企業を支援するための税金を業務拡大に利用し、組織の防衛を図ろうとした行為は納税者である国民に対する裏切りだ。不正を実際に行った職員、経営陣はもちろん、監督官庁である経済産業省の責任も厳しく問われなければならない。

 商工中金は金融を通じた中小企業支援を目的とした政府系金融機関で政府が約50%出資、全国に100店舗を展開している。不正の舞台は国の低利融資制度「危機対応融資」だった。リーマン・ショックなど外部要因によって経営が厳しくなった中小企業を公金で支援するものだ。連鎖倒産などが発生すれば雇用が失われ、地域経済が激しく圧迫される。こうした事態を防ぐために税金を投入している。

 ところが商工中金は、経営は順調で本来は融資を受ける必要がない企業の財務諸表を基準に合致するように改ざんし、融資実績を積み上げていた。不正融資は計4609件、総額約2646億円に上る。ほぼ全店の444人の職員が関わっていた。

 一般的な中小企業向け融資が振るわず業務が縮小する中、国の融資制度に活路を見いだそうとしたのだ。支店、営業職員にノルマを課して営業攻勢をかけ、融資は順調に拡大していった。それはそうだろう。公金で利子を補えるため、民間金融機関より有利な条件を提案できる。少しでも金利負担を減らしたい企業にとってみれば、取引金融機関を商工中金に変更することは、コスト削減の観点からは合理的な判断だ。

 一方、商工中金に得意先を奪われた民間金融機関はたまったものではなかっただろう。市場競争が激化する中で、企業努力の末にギリギリ採算が合う金利を設定した融資が、国の力にものをいわせた低金利で根こそぎ持っていかれたら、商売は「あがったり」だ。

 リスクや規模などから民間ができないことを引き受けるのが政府系機関の基本だ。商工中金はその範囲を飛び越えて民間市場を食い荒らしたといえる。この間、各地の地銀幹部から厳しい批判が相次いだのは当然だ。商工中金の不正は、マイナス金利などで苦しい経営を続けている地域金融機関をさらに追い込んでしまった恐れもある。

 商工中金の暴走を許してしまった経産省の不作為も見逃すことはできない。定期検査で不正を見抜けなかったのはなぜか。今の社長の安達氏、前任の杉山秀二氏も経産事務次官OB。しかも、商工中金を通じた中小企業支援は経産省が予算要求した政策だ。

 政策の推進と監督を同じ役所が担っていた。検査に手心が加わる構造的な問題があったのではないか。世耕弘成経産相らが給与の自主返納をするのは当然だが、政府全体として中小企業支援の推進と監督を整理する必要がある。

 商工中金は元々、完全民営化の方針だったが、東日本大震災などで公的支援の必要性が指摘され先送りされた経緯がある。経産省が設置する有識者会議が今後、業務運営や管理体制を検討するが、抜本的な組織の見直しにつながらなくてはならない。完全民営化も視野に入れるべきだろう。(共同通信・高山一郎)

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