中国共産党の第19期中央委員会第1回総会(1中総会)で、党中枢の政治局常務委員7人が選出され、習近平総書記(国家主席)の2期目指導部がスタートした。総会前日に閉幕した第19回党大会では、習氏の名前を冠した政治思想が党規約に盛り込まれ、習氏の1強体制が堅固になった。

 習氏は党大会の活動報告で、今世紀半ばに「近代化された強国」を完成させるほか、平和的な発展の道を歩み「人類の運命共同体」の構築を目指すと訴えた。

 習氏は記者会見で「国家主権、安全、発展の利益をしっかり守り、人類の平和と発展に貢献する」と強調したが、いかにして「強国と共生」を両立させるのか明確ではない。国際社会は中国が覇権を求めず平和主義を信奉するよう強く働き掛けていきたい。

 常務委員としては習氏とナンバー2の李克強首相が留任し、習氏の信頼が厚い趙楽際・党中央組織部長ら5人が新たに就任。「ポスト習」候補と目されていた若手2人は選ばれず、5年後、習氏が慣例を破り3選を狙う布石との臆測も流れる。

 習氏の思想は党規約の中で「習近平の新時代の中国の特色ある社会主義思想」として、毛沢東思想、〓(登の右に郊のツクリ)小平理論と並んだ。江沢民元総書記と胡錦濤前総書記の思想に名前は冠されておらず、習氏は毛、〓(登の右に郊のツクリ)に比肩する歴史的な指導者となった。

 だが、習氏への権力集中の弊害も心配だ。習氏が政策を誤りかけたとき、指導部内で誰かがいさめることができるか。毛沢東への個人崇拝が招いた文化大革命のような混乱は起きないか。注視していく必要があろう。

 習氏の思想は「豊かで強く、民主的、文明的で、融和した美しい社会主義の近代化強国」をつくるため(1)党の指導(2)社会主義の核心価値体系と国家安全観の堅持(3)厳格な党治―などを柱とした。

 習氏は建国100年を迎える今世紀半ばに「近代化国家」を目指すとしてきたが、報告では大国意識を反映し「近代化強国」と踏み込み、記者会見で2期目は「(強国建設のため)歴史的に重要な時期」と述べた。

 中国が新興大国として国際社会で影響力を拡大したいと考えているのは間違いない。ただ、強国路線をもって、習政権が米国に代わり中国中心の国際秩序形成を狙うと断じるのは早計だ。

 覇権主義的な手法では、国際社会の激しい抵抗に遭う。中国指導部はそれが分かっているから、各国と共生を図りながら、影響力を拡大する運命共同体構想を考えついたのではないか。

 習氏は「中国の夢の実現には、平和的な国際環境と安定した国際秩序が必要だ」として「人類の運命共同体」の構築を掲げた。これは習氏が推進する現代版シルクロード構想「一帯一路」を支える理念でもある。

 中国は領有権争いや台湾・香港の独立阻止など国の核心的利益に関わる問題では強国路線に傾き、「一帯一路」などの経済協力を進めたい場合は共生を前面に打ち出すだろう。こうした使い分けを踏まえ、入念な対中政策を講じたい。

 安倍晋三首相は「一帯一路」に支持を表明し、海洋対立で悪化した日中関係に改善の兆しが出ていた。首相は早期に習氏と会談して「強国と共生」について、率直に問いかけ、関係修復の道筋を探るべきだ。(共同通信・森保裕)

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